菅首相に足りない国家戦略を渋沢栄一が提言。日本が世界から求められている役割

渋沢栄一&菅首相
 

新型コロナウイルスの感染拡大により、これまでとはまったく異なる生活を強いられることになり、私たちは多くのものを失いました。しかし、同時にさまざまなことに気付かされたことも事実です。地球規模で人々の健康問題を考える「グローバルヘルス」もそのひとつ。日本の資本主義の父・渋沢栄一の子孫で、世界の金融の舞台で活躍する渋澤健さんは、コロナ禍の今だからこそグローバルヘルスが大切だと解説します。

プロフィール:渋澤 健(しぶさわ・けん)
国際関係の財団法人から米国でMBAを得て金融業界へ転身。外資系金融機関で日本国債や為替オプションのディーリング、株式デリバティブのセールズ業務に携わり、米大手ヘッジファンドの日本代表を務める。2001年に独立。2007年にコモンズ(株)を設立し、2008年にコモンズ投信会長に着任。日本の資本主義の父・渋沢栄一5代目子孫。

コロナ禍だからこそ重要なグローバルヘルス

謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

青天と新緑に心安らぐ春を迎えましたが、1年前と同様、制約のある生活が続いています。変異を繰り返し、世の中を脅かす新型コロナウイルス感染症はいつまで続くのでしょう。

一方、コロナ禍により新しい時代への兆しも感じています。経済活動に急ブレーキがかかったことで自然環境への影響が可視化され、「グリーン」への意識がビフォー・コロナに比べ一段と高くなりました。グローバル社会において日本がこれから存在感を示すためには、グリーン国家戦略は不可欠です。

菅総理の英断により、「2050年カーボンニュートラル」の目標を日本政府は宣言し、また、4月下旬に米国が主催した気候変動サミットの演説で、総理は温室効果ガス削減目標を現行の2013年度比「26%減」から「46%減」に大幅に引き上げる方針を表明しました。「トップレベルの野心的な目標を掲げることで、世界の脱炭素化のリーダーシップを取っていきたい」という総理の言葉から、グリーン国家戦略は新たな産業の成長戦略であるということがうかがえます。

サステナブルな経済社会を目指す、もうひとつ重要な分野における成長戦略を4月下旬の首相表敬の際に提言しました。グローバルヘルス(国際保健)です。

同分野における企業戦略について国会議員向けの勉強会シリーズを昨年からゲイツ財団が主催し、その司会を務めさせていただいた関係で、誠に僭越ながら「代表」として「グローバルヘルスを応援するビジネスリーダー有志一同」がまとめた要望書を菅総理にお渡しいたしました。

概要はこちらです。

  • 日本の保健医療関連ODAについて今後5年間で倍増を目指す
  • グローバルヘルス分野により多くの多様なセクターの民間企業が参入する体制を構築
  • 同分野において政策や規制緩和、規制調和の国際的な議論のリーダーシップを発揮
  • 日本企業のイノベーションが低中所得国においても認知され、現地で活用される様、政府として取り組む
  • 官民が連携して競争優位な人材を育成できる仕組を構築

新型コロナウイルスの対応で日本国内の深刻な課題が山積みになっている中で、なぜ途上国・新興国向けのODAを増やす必要があるのかという疑問は少なくないでしょう。しかし、理由はこのタイミングで「カーボンニュートラル宣言」を発令していることと同じです。

環境問題と同様に、自国のみでは保健医療課題であるパンデミックは対処できません。一方、自国のみで対処できない世界的課題ではありますが、的確な国家戦略を打ち出すことによって、自国のプレゼンスが世界で変わります。

カーボンニュートラルと同様にグローバルヘルスは新たな産業の成長を促す国家戦略です。コロナ禍の大衝撃を全員が体験したからこそ、実現させるべき新たな社会設計になるからです。

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