コロナ禍により対面での営業活動が激減し、需要が減ったものに名刺印刷があります。ほかにも営業資料や各種チラシ等の印刷需要は落ち込み、地方の印刷会社は厳しい状況にあるようです。打開策として、SDGs関連の取り組みに可能性がないか探っている印刷会社経営者がアドバイスを求めたのは、『永江一石の「何でも質問&何でも回答」メルマガ』著者で人気コンサルの永江一石さんでした。永江さんは質問には短く簡潔に回答した上で、クライアントの利益に直結する工夫やサービスが必要と、具体的にアドバイスしています。
地方の印刷会社の生き残り戦略
Question
いつも楽しく拝見させて頂いております。私は地方で個人経営程度の印刷会社をしている者です。コロナの関係で大きく売上を下げてはいますが、実際はペーパーレスなどの推進を企業が進めたことにより数年前より経営は右肩下がりの状況でございます。
コロナで人と人が直接接触できなくなり、まさかの名刺の発注も激減です。そこで、巷で話題のSDGsを導入したいと思って少し勉強していました。バナナペーパーなどを使った印刷物の製作ぐらいは思い付くのですが、そこから先がなかなか思い浮かびません。印刷とSDGsとは色々な場面で共存共生できると思うのですが。
そこでお聞かせください。
- SDGsは印刷会社として営業ツールとして有効か
- もし有効な場合はWebではどのような項目を伝えると他社と差別化できるのか
- 企業・地方役所がどこまでSDGsに興味があり、それが大きく仕事に繋がるのか
永江さんからの回答
初めにズバッと斬ってしまい申し訳ありませんが、SDGsが印刷の仕事を増やすことはまずないでしょう。印刷会社として生き残りたいなら、そんなことよりも差別化された価値を出せるようになることが大事です。
まずいくら環境や社会貢献が大事だろうが、企業は生き抜くのに必死なので再生紙を使った名刺に替えることにわざわざお金をかけたりしません。そもそも非接触化・デジタル化がコロナで加速しているので印刷のニーズは減るばかりです。その方が便利なので紙が減るのは必然なんです。
そんな中で、指示された印刷物をそのまま印刷するだけの事業者は消滅するだけなので、印刷業として生き残りたいなら差別化された付加価値を出せるようになるしかありません。例えばテイクアウトを獲得したい飲食店のチラシ印刷であれば、ただ言われたものを印刷するだけでなく、集客ノウハウを身に付けてチラシの内容を改善し実際の集客につなげられるとか。
よくあるメニューを載せただけの一方的なフライヤーではなく、対象のユーザー層を定めてメッセージを強く打ち出したり、食べたくなるような魅せ方をしたり、注文動作をしやすく工夫したりすることで実売を増やす余地は大きいでしょう。それらをコンサルティングして、ただ印刷物を作るだけではなく集客の企画ができて結果が出せれば飲食店から依頼が殺到するはずです。それって多くの印刷会社には提供できない価値ですよね。
SDGs等の社会概念ではなく、クライアントにとって価値の高い(クライアントの収益を上げられる)差別化されたノウハウやサービスを作っていくことが大事だと思います。
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