カギは「同じ敷地内」。ニトリがコロナ禍に外食産業へ打って出た目論見

 

なぜ今この時期に、ニトリが外食産業に進出するのか?

このコロナ禍の時期に、飲食店さんの多くは苦戦をしていますが、なぜ、ニトリは飲食事業に進出したのでしょうか?2店舗とも、ニトリの家具・雑貨店舗と同じ敷地内に出店しているところに、カギがあります。

家具・雑貨店舗に来たお客様が、どうせなら食事もしていこう、という相乗効果が期待できます。家族で来る、となると「新しいテーブルを買いに行こう」となり、「どこで買おうか」と考える時、「ニトリダイニングでランチを食べた後に寄れるから、ニトリにしようか」といった具合に選ばれる可能性が高まります。

また、ニトリは、これまで家具の企画から、生産、そして販売までを、自社で行ってきました。これは、アパレルのユニクロと同じように、製造小売業、SPAという仕組みです。バリューチェーンの間に、問屋などの中間流通が入らないので、コストと手間が省けることで、仕入れて販売する小売業よりも、低価格を実現してきました。今回の外食事業においても、食品メーカーから直接仕入れる、と報道されています。なので、家具で培ったこの製造小売業のノウハウを生かして、低価格で美味しいメニューを実現したい、と考えているのでしょう。

また、一般に小売業では、お客様の滞在時間が長ければ長いほど、お客様の購入額があがります。家具や雑貨を買いに来るお客様は、購入するとすぐに帰ってしまいますので、このように、飲食店にいてその後で買い物、ということになれば、ニトリ全体に滞在する時間も長くなり、売り伸ばしが期待できます。

また、小売業では、お客様が来店する回数(=頻度)が多ければ多いほど、売り上げが上がります。家具や雑貨を買う頻度は、それほど多くはありません。実際に、私も多くても年に数回行くか行かないかくらいです。なので、飲食店も併設していれば、ランチのついでに寄ってみる、という具合で、来店する回数も増えることを狙っているのでしょう。

考えてみれば、IKEAの店舗には、レジで支払いを終わって出たところに、飲食店舗と食材売り場があり、そこで休憩したり食材を購入したりできます。また、銀座にある無印良品は、1階に生鮮食品売り場があり、地下にはカフェがありますし、名鉄百貨店にもMUJI Cafeがあります。IKEAも無印良品も、同じように来店する回数を多くしたいため、このようなことを展開しているのです。

ニトリは当然、長い目で飲食事業を考えているでしょうから、今回の路面店だけではなく、無印良品のように、イオンモールなどにもいくつか店舗を出店している、「ニトリ デコホーム」という雑貨販売店にもニトリダイニングを併設してくるでしょう。また、東京の新宿南口にある5階だての店舗の一部にも、ダイニングを入れてくることを想定しているはずです。

お客様の来店頻度を上げたり、滞在時間を伸ばしたりする工夫は、厳しい今の情勢の中でも、売り伸ばしをしていく良いヒントになります。その意味でも、このニトリの取り組み、今後に注目をしたいと思います。

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image by: Ned Snowman / Shutterstock.com

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