国税庁マルサが資本金1億円以上の大企業に踏み込めぬ「真の理由」

 

国税幹部職員には顧問あっせん制度もあった

大物OBと国税との癒着は、構造的なものです。というのも、少し前まで国税は大っぴらに幹部職員の退職後の顧問あっせんを行っていたくらいなのです。これは、税務署が管内の企業に働きかけて「今度、うちの署長がやめるのだけれど、顧問として雇ってくれないか」と打診するというものです。その打診を受けいれる企業は、当然のことながら、税務署に手心を加えてもらおうと思っているはずです。また税務署の方も、税務署長を雇ってくれた企業に、そうそう厳しいことも言えません。自分たちもゆくゆくお世話になるかもしれないからです。

こういう「あっせん」を国税は長い間、堂々とやっていたのです。国税と企業の癒着もいいところです。信じられない事かもしれませんが、これは事実です。数年前に国会で問題にされたため、あっせん制度は平成22年に、一応、廃止されました。が、今でも内々では行われています。この制度に関しては、国税職員の間でも常々疑問に思われていることなのですが、最高幹部のやっていることなので、なかなか廃止できないというのが、実情です。

そして、日本の大企業の大半は、国税の大物OBを何らかの形でつながっています。顧問にしたり、職員として受け入れたりもしています。そのため、大企業は厳しい税務調査を受けることはないのです。

信じがたいことですが、資本金1億円以上の大企業に、マルサが入ったことはほとんどないのです。マルサというのは、正式には「調査査察部」といって、だいたい1億円以上の脱税の疑いのある者に対して、裁判所の許可をとって強制的な調査を行う部署です。映画やドラマでたびたび取り上げられているので、ご存じの方も多いでしょう。

このマルサは、大企業には踏み込めないのです。なぜマルサは大企業に行かないのでしょうか?もちろん、国税庁はその理由を用意しています。理由もなく、大企業に入らないのであれば、誰が見てもおかしいからです。その理由とはこうです。通常、マルサは1億円以上の追徴課税が見込まれ、また課税回避の手口が悪質だったような場合に、入ることになっています。しかし、大企業の場合、利益が数十億あることもあり、1億の追徴課税といっても、利益に対する割合は低くなります。つまり、大企業では1億円程度の脱税では、それほど重い(悪質)ではないということです。つまり、中小企業の1億円の脱税と大企業の1億円の脱税は、重さが違うというわけです。

また大企業には、プロの会計士、税理士などが多数ついており、経理上の誤りなどはあまりない、そして大企業の脱税は海外取引に絡むものが多く、裁判になったとき証拠集めが難しい、というのです。

これらの理由は、単なる言い逃れに過ぎません。確かに、中小企業の1億円と大企業の1億円では、利益に対する大きさが違うでしょう。大企業の場合、1億円の脱税をしていても、それは利益の数百分の一、数千分の一に過ぎないので、それで査察が入るのはおかしい、というのは、わからないでもありません。が、それならば、大企業の場合は、マルサが入る基準を引き上げればいいだけの話です。利益の10%以上の脱税額があれば、マルサが入る、というような基準にすればいいだけです。

また「大企業の脱税は海外に絡むものが多く、証拠を集めにくい」という理由も言語道断です。こういう理屈が成り立つならば、海外絡みの脱税をすれば、マルサに捕まらない、ということになります。

つまり、よりずる賢く脱税をすれば、マルサは手の出しようがないということです。

大村大次郎さんのメルマガ初月無料のお試し購読はこちら

 

print
いま読まれてます

  • 国税庁マルサが資本金1億円以上の大企業に踏み込めぬ「真の理由」
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け