日本を意図的に刺激か。北京五輪を前に中国で起きた「世論事件」

 

☆「一つの声しか許されなかったのが、違う声が出てきた!」

以上、日本に関連する三つの世論事件について、マスコミとネット世論は完全に当事者を猛烈に批判している。異論者がいても、その声はすぐにかき消され、結局一つの声しか許されない状況になっているのが、「違う声が出てきた!」という事実はやはり大事だ。

国家公祭日について、2014年2月27日、第12期全国人民代表大会常務委員会第7回会議において、9月3日を「中国人民の抗日戦争の勝利記念日」、12月13日を「南京大虐殺犠牲者公祭日」とすることが決議された。

歴史と戦争をどう記憶するのか。この問題について、中国と世界の間、ギャップがあると考えられる。

第二次世界大戦終了後、主要参戦国の政府は、犠牲になった国民に敬意を表し、戦災の歴史に対する記憶を高めるために、国家追悼記念日を導入した。ポーランドのアウシュビッツ記念館、アメリカのアリゾナ記念館、ロシアのビクトリー博物館、日本の広島と長崎の原爆死没者追悼平和祈念館などでは、毎年、平和の祭典だという国民的イベントが行われている。

しかし、中国の戦争記念行事は、平和の大切さを訴える一方で、より明確に日本を標的に向けられているものがみられる。そして、歴史と現実を混同しているらしい。歴史は憎しみで記念されるものではない。

そして、12月13日に着物を着ることがタブー視され、警察に通報されたというのはたいへん驚きだ。過去を忘れないことは、現在と未来の平和を大切にすることだ。今の日本人を戦争から切り離して考えるべきだ。今の日本と日本人に対する憎しみを持ってはいけない。戦争と着物を切り離して考えるべきだ。着物には罪がない。着物を着る人には全然非がない。むしろ、美の伝達者である。

「公祭日」は特別な日であるとはいえ、着物を着る人を非難するのは、日本の伝統や文化に対する理解や敬意を欠いていると言わざるをえない。また、12月13日に日本料理を食べるのもダメだろうか。

録音を聞く限り、宋氏の授業内容は、歴史問題に疑問を持つことへの表現は不適切な点が全然なかったと思う。しかし、中国では、南京事件の犠牲者数を議論すら禁止されているだろう。

世論の風向きは、10年前よりさらに悪くなっているかもしれない。過去、桜の季節に日本を訪れる中国人観光客の多くは、靖国神社の桜を愛でたと記憶している。中国国内の友人によると、現在、日本の国旗や天皇が描かれた資料の公式的印刷は禁止されている。

個人によって違っているかもしれないが、中国人は日本に対して、過去の戦争を蒸し返して延々と日本を非難する一方で、現在の日本政府を見下しながら批判するなど、複雑な感情を抱いている。一方で、日本の製品やサービスの質の高さには、うらやましさを持っているに違いない。

中国と日本の関係には以心伝心することが大切だ。自分が他人をどう思うかが、他人が自分をどう思うかにつながる。国もそうだと思う。外交にも、平等と尊敬が必要だ。

北京五輪が開幕する前に、日本に関連する世論事件が起きていることは、遺憾の意を言いたい。もし、これが日本を刺激するための意図的なものであるならば、間違いなく愚かな行為である。日本がもっと寛大になり、中日共通の利益のために中国に寛容に対応することを望む。

世論事件とは、「中国で、違う声が出てきた!」ということだろう。「人人心中都有一杆秤(誰の心にも物差しがある)」という中国語の俗語があり、誰もが自分の心の中に客観的な認識や評価を持っていることを意味する。

中国国内の知人たちも、上記の三つの世論事件について、公式とは異なる見解を持っているはずだ。まだ声を上げていないが、静かに自ら思考を醸し出しているに違いない。もっと多くの声が出されることに期待せざるをえない。

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image by: NGCHIYUI / Shutterstock.com

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在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。

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