これから待ち受ける“給与ダウン”の地獄。世界と真逆の金利政策で加速する円安に高笑いのアメリカ

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今回は、直近のアメリカ景気の動向や利上げ、そしてそこに関連する円安の長期化やその影響についてお話をしたいとおもいます。

アメリカの景気を占う2つの数字

4月1日に、今後のアメリカの景気を占う2つの数字が発表されました。一つは、3月のアメリカの雇用統計です。

非農業部門就業者数は43万1000人増加し、失業率は2月の3.8%から3.6%に下がる、力強いペースを維持し、経済の好調を図る意味では大きな後押しとなる数字となりました。

もう一つ1日に発表された数字は、賃金上昇率です。

1月まで6か月平均で前月比0.5%ずつの上昇だったのが、3月は前月比0.4%の上昇で、2月は、0.1%の上昇でしたので、鈍化と判断されている訳ですが、これは、決して悪いわけではなく、労働市場に戻る人が増え、今まで深刻な問題と言われてきた極端な労働市場のひっ迫と、それによる賃金上昇が緩和されます。

つまり、企業がさらに賃金を上げなくとも労働力を確保でき、製品値上げを緩和する状況になりつつある、ということは、インフレの抑制に繋がる、ということで、こちらも、望ましい数字と言っていいと思います。

こういった追い風を受けて、既に3月に0.25%の利上げを行い、今年あと6回利上げを実施すると言われているFRBですが、次回利上げは、0.25%の利上げではなく、0.5%の大幅利上げを支持する声がFRB内で強くなりつつあるとのことで、本当に0.5%にするかどうかはまだわかりませんが、いずれにせよ、早急に利上げを進め、金融引き締めを促進していく方向に動きそうです。

日本の問題

ここで問題は日本です。急激な円安が進行していることは皆さんよくご存じの通りですが、今の円安の要因は、もちろん日本が経済的に弱体化していると評価されていることもありますが、ほぼ、日本と世界の正反対の金利政策にあると言えます。

アメリカだけでなく、その前から、イングランド銀行、ECB(欧州中央銀行)など、主要国がすべて金融引き締め、利上げに動いている中で、日本だけが依然、アベノミクスの流れを汲んだ異次元金融緩和と言われた出口なき緩和策を継続している状態にあります。

3月28日に円が125円台を一時突破したのも、日銀のイールドカーブコントロールの一環の、いわゆる連続指値オペを実施した結果、さらに日米金利差が拡大すると見られたためです。

因みに日銀の10年債利回りの容認上限は0.25%ですが、アメリカはすでに2.5%に迫っており、その差は10倍近く、また2年債利回りも、アメリカは2.3%前後ですが、日本は未だにゼロどころかマイナス圏内で、これでは、ますますドルを保有する方がリターンが高くなり、ドル高円安方向に動いていきます。

円安ドル高の状況が与える影響

この円安ドル高ですが、アメリカ政府にとってはこれで今は良いのです。インフレ率が8%に届くかという状態で、輸入品の価格が下がる方向に動くことは消費者にとっては喜ばしいことであり、ゆえにアメリカ政府は今回日本に利上げ圧力を掛けていません。

日本は、これから更に輸入品が高くなってきます。円安は輸出競争力を増しますが、一部の大企業が利益を増やすだけで、その他の中小企業は、原料を海外から輸入して、加工して、国内市場で販売していますので、円安の恩恵は極めて少なく、逆に、原料高騰のマイナスを大きく被ります。

日本の就労人口の70%は中小企業に勤めていますので、給料の上昇につながらないことはおろか、賃下げにもなりかねないことは過去の例を見ても明らかです。

ガソリンや食品、これらの殆どの原料は輸入であって、こういった商品の高騰が今でさえ問題になっているのに、まだこれから更に拍車がかかる(今の円安相場で取引された原料などが日本に輸入され使用されるのは数か月後)ということで、日本国民の生活は苦しくなる一方です。

行き過ぎた円安は日本経済の害であると私はずっと主張していますが、適正な円相場になる様、政府と日銀はいよいよ、テーパリングを含めた適切な政策/施策を早急にお願いしたいと思います。

出典:メルマガ【今アメリカで起こっている話題を紹介】欧米ビジネス政治経済研究所

image by:chrupka / Shutterstock.com

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