マクロンとルペンの一騎打ち。大企業との癒着発覚で大逆風、再選に黄色信号

2022.04.12
by NozomiK
macron_lupein
 

フランスの大統領選が始まり、現職のエマニュエル・マクロン氏とマリーヌ・ルペン氏の一騎打ちとなりました。この構図は二度目になりますが、今回はどのような様相を見せるのでしょうか。メルマガ『パリ大学博士・世川祐多のフランスよもやま話』では歴史学者で日仏交流に情熱を注ぐ世川祐多さんが、2人の現在の状況やフランス内部の感触についてまとめています。

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マクロンVSルペン 2

「マクロンVSルペン2」という風に書くと、何だかゴジラかガメラの映画のような響きがする。

フランスの大統領選は、絶対過半数を取る候補者がいない場合、上位2人による決選投票が行われるが、前回と同じくこのシステムが適用され、2度目のマクロンVSルペンになった。

無論メディアが「極右」とされる政治家を叩くのは、西側陣営は同じのようで、アメリカのトランプ・日本の安倍晋三・フランスのルペンは、十二分に叩かれる対象である。

しかし、彼らが弾丸の雨あられを掻い潜り、非常に選挙に強いことは、民主主義の上の事実として横たわる。

目下の民主主義というものは、一定年齢以上の国民に等しく一票を与えており、当然政治家は選挙に受かるためにポピュリズムに走る。

どうしたって社会の構造というものはピラミッドになり、イギリスなどの身分制社会であれば貴族よりも平民の数が圧倒的多数になるし、表面上身分制を否定している現行の日仏社会においても、エリートと一般市民、富裕層と非富裕・貧困層であれば、一般市民や非富裕・貧困層の数が桁違いに多い。

現代社会ではイギリスなどの貴族院議員を除けば、政治家もそのほとんどが平民やPeople層から身を立てる訳であるが、彼らが票を多く集めるためにPeopleに迎合し、よりPopularな方へ政治が向かうというのは、民主主義が内包する自明の理である。

ルペンは、そこの取り組みが非常に上手い。反エリートを声高に掲げ、民衆の情に訴えるのだ。彼女のマクロン批判は、こんな端的なフレーズで叫ばれる。

“Pendant cinq ans, il vous a méprisés ; pendant cinq ans, il vous a humiliés. C’est le moment de nous en libérer.”

「5年間、彼(マクロン)は皆さんを軽んじた!5年間、彼は皆さんを侮辱した!今こそ我々が解放されるべき時なのです!」

上手いね。と思うのが、マクロンが「皆さん」を軽んじ侮辱したと言い、最後に自分も含めた「我々」が解放されるというレトリックで、ルペンも「皆さん」と同じ側なのだと強調しているところである。

そもそもルペンは政治家の娘で、ヌイイという高級住宅街の出だから、この「我々」の中には入らないのだが…貴族ではないので、平民でありこそすれ、民衆の一人というのは、いささか語弊がある。

しかし、フランスは特に労働者がエリートを憎む傾向が強く、根拠云々以前に、こういうフレーズが労働者や貧困層に刺さってしまうのも事実だ。

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