習近平が台湾有事で北朝鮮に求める役割。ウクライナ侵略から得た教訓とは

2022.04.29
 

北朝鮮は何を学んでいるのか

その北朝鮮は、中国が台湾侵攻に踏み切った場合、ミサイルを発射するなどして、海上自衛隊や横須賀にベースを置くアメリカ第7艦隊の一部を、日本海に釘づけにする役割を担うと見られる。

北朝鮮は、各メディアが報道してきたとおり、今年に入って、短距離、中距離、鉄道移動型、そして長距離と様々なタイプのミサイル発射実験を繰り返してきた。その狙いは、端的に言って「アメリカ抑止」である。

ウクライナは核を持たないため、ロシアの侵攻を許した。北朝鮮の金正恩指導部は、ロシアに侵攻されたウクライナを見て、小国は、戦略核(爆発力が大きく広範囲を攻撃できる)や戦術核(爆発力が小さくピンポイント攻撃に利用しやすい)を持たなければ、大国に狙われるとの思いを強くしたはずだ。

とはいえ、友好国ながら大国であるロシアが小国のウクライナに攻め入った今回の戦争は、「アメリカという大国の敵対政策に対抗するため無敵の軍を作る」としてきた方針とは、若干、矛盾が生じる。そのため、ロシアの侵攻開始から2か月以上が経過した今も、北朝鮮国民には、ウクライナ危機の情報は全く知らされていない。

ウクライナ有事から台湾有事、そして日本有事へ

いずれにしても、今年秋ではないにせよ、この先5年から6年の間に、中国による台湾侵攻や尖閣諸島侵攻が起きる可能性は十分にある。

尖閣諸島が攻撃されれば、日本はもちろん当事国になるが、台湾の場合でも、日本の存立が脅かされる「存立危機事態」に陥るリスクは高い。

日本の石油輸入ルートであるバシー海峡が封鎖されたり、沖縄のアメリカ軍基地に電磁パルス攻撃が仕掛けられたりすれば、否応なく日本も巻き込まれ、「武力攻撃事態」という次のフェーズへと進む危険性もある。

また、中国駐在の日本人約11万人も「人質」同然になるという問題もはらむ。

今後は、ロシアとウクライナの戦況を、中国と台湾、あるいは中国と日本に置き換えながら、官民挙げて実効性のある対策と法整備を急ぐべきである。中国は待ってくれない。

清水克彦(しみず・かつひこ)プロフィール
政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師。愛媛県今治市生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。京都大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得期退学。文化放送入社後、政治・外信記者。アメリカ留学後、キャスター、報道ワイド番組チーフプロデューサーなどを歴任。現在は報道デスク兼解説委員のかたわら執筆、講演活動もこなす。著書はベストセラー『頭のいい子が育つパパの習慣』(PHP文庫)、『台湾有事』『安倍政権の罠』(ともに平凡社新書)、『ラジオ記者、走る』(新潮新書)、『人生、降りた方がことがいっぱいある』(青春出版社)、『40代あなたが今やるべきこと』(中経の文庫)、『ゼレンスキー勇気の言葉100』(ワニブックス)ほか多数。

image by: plavi011 / Shutterstock.com

清水克彦

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