中国とロシア、北朝鮮が日本の領土を狙うことは本当にあるのか?

 

元々資源・エネルギーに恵まれず、電気自動車への転換に出遅れ自動車大国としての地位を失いつつある日本。GAFAに代表されるIT分野での存在感も薄く、再生可能エネルギーの分野でも精彩を欠く。中国がいま大きな代償を払ってまで獲得しなければならないモノはない。

ただ「領土を狙う」という意味が「ミサイルで攻撃する」という解釈なら、可能性は否定できない。どの国も相手国の動きに危機感を覚え追い詰められれば、カウンターバリューを含めた攻撃が選択肢に上るからだ。当然、想定されるのは最悪の事態なので、損得の計算式も平常時とは違ったものになる。

事実、中朝ロのなかで最も軍事力の劣る北朝鮮でさえ、核弾頭を積んだミサイルで東京を狙う能力をすでに備えている。標的を狙うミサイル技術も、潜水艦発射型から極超音速まで、日進月歩だ。

今後もし金正恩政権が倒れることがあったとしても懸念は付きまとう。暴発のリスクに備えなければならず、逆に南北が統一されれば日本は人口と軍事面で強大となった朝鮮半島と向き合わなければならなくなるのだ。これが東アジアのもう一つのリアルだ。

金政権が倒れる、と軽々しく書いたが、その前には積年の敵である日米に対しどんな行動に出るのだろうか。休戦状態にある朝鮮戦争の当事者である国連軍の基地が日本に置かれている現実を考慮すれば、日本がターゲットになる可能性はなおさら高まる。

そのとき日本でいま議論される「反撃能力」は機能するのだろうか。少なくとも彼らを思いとどまらせる理由にはならない。そもそも日本には北朝鮮の動きが全く見えていない。そんななかでどうやって「敵が攻撃する確かな兆候」をつかめるのか。またその兆候が誤りであった場合──実際そうした局面では偽装とフェイクがあふれる──取り返しのつかない責任が日本を襲うという状況下で誰が攻撃を決断できるのか。

つまり反撃能力を獲得し憲法を改正してもインスタントに日本が置かれた状況は変わらない。北朝鮮に対してでさえそうであれば、ロシアや中国が相手ならばどうだろう。

ロシアのウクライナ侵攻後、日本では「もしウクライナが核を保有していたら、あんなに簡単に侵略されることはなかった」という議論が巻き起こった。これも頭の体操として考えたいのだが、ウクライナは果たしてどのタイミングで核を使うことができたのか。決断は簡単ではなかったはずだ。

先制使用は国際世論の厳しい非難を招く。となれば当然、いまのように欧米社会から支援を受ける道は断たれるだろう。一方、ロシアは被害者となり、かつ核を使用する大義名分を得るのだ。待っているのは恐ろしい未来ではないだろうか。このことは日本にも当てはまる話だ。
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2022年6月18日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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