ジンソーダ飲み放題が無料の衝撃。それでも儲かるマグロ料理店のからくり

 

「宴会が取れない時代」80坪に二業態

そこで利益が出るからくりは、GCが「新鮮組まぐろ屋」(以下、まぐろ屋)、と「鮪酒場まぐろじん」(以下、まぐろじん)を同時に営んでいるということから可能になっている。

「まぐろ屋」はマグロの赤身だけを使用したファストフード系の業態。「まぐろじん」はそもそも捨てられていた希少部位(=内臓)を使用し、一般の居酒屋メニューも入れている酒場業態。二つの業態によっていわばマグロの「一本買い」を行っている。「まぐろ屋」で赤身を大量に使用することに連れて、内臓も大量に送られてくるようになる。内臓の掃除は面倒なことと前述したが、赤身を大量に使用してくれるから、現地の生産者は喜んで内臓の掃除を行ない、送り届けてくれる。

そこで「まぐろ屋」は原価率65%、「まぐろじん」は41%となっている。赤身と内臓をセットで使用することでこのメリットが生まれることから、出店は二つの業態がセットになっていることでより効率的になる。6月3日東京・新橋に「まぐろ屋」をオープンしているが、同じ新橋に8月ごろ「まぐろじん」をオープンする。

さらに、天神橋筋商店街の「まぐろじん」は80坪という細長い物件の中にあって、「モツトキャベツ」という業態とシェアしている。

石原氏はこう語る。

「これからの時代は宴会が取れないということで、まず宴会に頼らない業態を考えた。しかしながら、80坪を1つの業態で営業するのはヘビーではないかと。幸いにも、この物件には入口が二カ所、商店街側とその反対側にもあって、この二カ所からお客様を取り込むことができる。だから、別々の店の営業が可能となる。店の中で二つの店がキッチンとトイレを共有することで、さらに効率は高まる」

「まぐろじん」の業態が出来上がり、もう一つの店舗はホルモン焼肉の「レモホル酒場」にしようと考えたが、煙が出る業態はできないということで、以前から構想を温めていたちりとり鍋の店にした。深さのある鉄板で牛肉と野菜をお客が煮る業態。こちらは「レモホル酒場」を担当しているアサヒビールの発案で、卓上タワーはサワーとハイボールの二連にしている。は90分飲み放題で500円。店内は“韓流”の世界観のPOPな雰囲気にしている。

「まぐろじん」と「モツトキャベツ」は見事に客層が異なっている。「まぐろじん」は老若男女で意外にもお客同士で静かに会話を楽しんでいる。「モツトキャベツ」はほとんどが20代女性。

「鮪酒場まぐろじん」とスペースを共有する「モツトキャベツ」の客層は20代女性がほとんど

「鮪酒場まぐろじん」とスペースを共有する「モツトキャベツ」の客層は20代女性がほとんど

「まぐろじん」は44席、「モツトキャベツ」は36席の規模、この二つの店で構成されている事業所は、オープン2カ月が経過していま一日5回転近くしている。「社内的には日商100万円を目指そうという状況」(石原氏)にあるという。

コロナ禍にあって、マグロ生産者を支援するというスタンスで取り組んだ新事業が、ほかが真似ることが難しい仕組みをつくり上げ高収益の体質をもたらしている。まさに奇跡の飲食ビジネスと言えるだろう。

image by: 千葉哲幸
協力:有限会社GC

千葉哲幸

プロフィール:千葉哲幸(ちば・てつゆき)フードサービスジャーナリスト。『月刊食堂』(柴田書店)、『飲食店経営』(商業界、当時)両方の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しい。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

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