米国ではあり得ない。東京のエリート校が「男女別学」だらけの大問題

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社会の少子化とは裏腹に、加熱する一方と言っても過言ではない首都圏の受験競争。東大や難関医学部が最終目標となるわけですが、その合格者の多くが男女別学の進学校出身者であることは広く知られた事実でもあります。そんな現状に異を唱えるのは、自身も東大出身で、プリンストン日本語学校高等部の主任を務める米国在住作家・冷泉彰彦さん。冷泉さんはメルマガ『 冷泉彰彦のプリンストン通信 冷泉彰彦のプリンストン通信 』で今回、日本で語られている「進学校が男女別学であるべき理由」が、国際的に見て非常に問題が多い考え方であると指摘。その上で、東京のエリート男女別学校の統合を含む大胆な改革案を提示しています。(この記事は音声でもお聞きいただけます。

※本記事は有料メルマガ『 冷泉彰彦のプリンストン通信 冷泉彰彦のプリンストン通信 』2022年8月9日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に 初月無料のお試し購読 初月無料のお試し購読 をどうぞ。

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どうして東京のエリート校は男女別学なのか?

アメリカにも、世界にも女子校というのはあるわけです。女子校の位置付けというのは割にハッキリしていて、社会的にはまだ女性の権利を拡大する必要があり、女性に対して優秀な教育を集中的に行うことが目的とされています。

アメリカの場合ですと、ニューヨークのバーナード・カレッジなど超難関の有名校もあるわけですし、ヒラリー・クリントンの通っていたウェルズリー大学などは、相当にラジカルなフェニミストを輩出していることでも有名です。

大学だけでなく、高校の段階でも、少人数で厳格な教育を行うための女子校というのは存在しています。そうではあるのですが、そうした例外を除けば、男女共学は全米で当たり前になっています。アイビー・リーグなどの伝統校の場合は、入試の段階で合格者の男女比率を50:50にするような操作も行われているようです(認めていませんが)が、これに対する異議というのはありません。

そもそも、訴訟社会であるアメリカでは無理だということがあります。仮に勉強熱心な高校や大学があり、優良なカリキュラムと、優れた教授陣を用意していて、その上で女性に門戸を閉ざしているようなら、訴訟で負けて徹底的なダメージを受けるに違いありません。ですから、「エリート男子校」というのは、基本的にはありません。

一方で、日本には中学や高校を中心に男女別学の伝統があるわけです。大学の場合は、特に女子短大というカテゴリが人気がなくなった結果、四年生大学への転換や共学化が進んでいます。また、この「女子短大へエスカレーターで」というシステムが崩壊した学校の場合は、共学化して、同時に海外留学を支援する国際教育を前面に打ち出して、大成功している学校があります。

今でこそ、渋渋(しぶしぶ)とか、渋幕(しぶまく)というニックネームで、中高における国際教育の最高峰と言われている渋谷学園も、また猛烈な勢いでこの2校を追っている広尾学園も、昔は地元の商家の娘さんなどが(失礼)行く、ヤンキースレスレの女子高(失礼)でした。ですが、この3校の場合は共学化によって、正に改革の成功例になっているわけです。

その一方で、首都圏の場合に東大や医学部などに多くの合格者を出している「受験校」のほとんどは男子校か女子校です。全く古臭い話ですが、それどころか、昨今の日本での議論を見ていると、男女別学ということを積極的に評価する動きもあるようです。

例えば、女子校というのはどちらかと言えば「良妻賢母」を育てるというよりも、女性のエリートを育成しようというポリシーを掲げた学校が多くなっています。この点では、アメリカの女子高校(ガールズ・スクール)と同じだと言えます。更に、具体的な理由としては、今でも共学だと理系の強い女子は「女のくせに生意気だ」とか「嫁に行けない」という目で見られるので、女子校の方が「理系女子」を育てるのにはベターだというような話があるわけです。

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