ホンマでっか池田教授が認知機能検査を受検して感じた「高齢者イジメ」

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高齢の運転者による重大事故の多発を受け、運転免許証の更新時に年齢によって新たな検査や講習が課されるようになっています。検査結果次第で交通違反などを犯していなくても免許を剥奪される場合があり、年齢による差別であると訴えるのは、75歳になったCX系「ホンマでっか!?TV」でもおなじみ、生物学者の池田清彦教授です。今回のメルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』では、認知機能検査を受検した経験を伝え、認知機能の低下と運転適性を結びつけることが問題である上に、違反歴ではなく年齢によって検査義務が課されることの不合理を説き、「予防拘束」のような制度に異を唱えています。(※編集部注:改正道路交通法により、今年5月13日から高齢者講習制度が変わり、認知機能検査の内容は3項目から2項目に変更されています)

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ついに後期高齢者になる

2022年の7月14日でついに後期高齢者になった。233年前のこの日はフランス革命が勃発した日で、7月14日はフランス革命記念日(パリ祭)で、フランス共和国の建国記念日でもある。市民革命を経験したことがない日本には、フランス共和国と同じような意味での建国記念日はない。

しいて挙げるとすれば、日本国憲法が施行された1947年5月3日をもって、大日本帝国の桎梏から脱した民主主義国家・日本の、建国記念日とした方が合理的だと思うが、周知のようにこの日は憲法記念日で、建国記念日は、初代天皇とされる、実在したどうか定かでない、神武天皇の即位日ということになっている2月11日である。真にいい加減だ。

ところで、国は高齢者をいじめたくて仕方がないようで、いろいろと意地悪をする。ちょうど運転免許証の更新の時期だった私は、免許の更新の申請の前に、認知機能検査を受検しろというはがきが来て、パソコンで予約をして、3月23日、八王子分室に検査を受けに行った。

この検査というのが年寄りを馬鹿にしたような検査で、まず、今は何年何月何日何曜日の何時何分かという設問があって、次に16種類のイラストを見せられて何が描かれているかよく覚えておくようにとの指示があり、次いで数字の列の中から、指示された数字(例えば3とか7とか)だけに斜線入れろという課題をこなし、その後で、先ほど見せた16種類のイラストを思い出して何が描かれているか記せという設問があり、思い出せなかったイラストについてはヒントを与えるので、それで思い出してもらいたいという話が続き、最後に指示された時刻をアナログの時計盤に書き入れろという問題で終了である。

このうち、数列の数字に斜線を入れるテストは採点対象にならず、直前にやったイラストを忘れさせるためにやっているとしか思えないので、かなり意地悪である。満点は100点で76点以上は2時間の高齢者講習、49点~75点は3時間の高齢者講習、48点以下は病院に行って専門医の診断を受けて、認知症ということであれば、免許の取り消し処分という流れになる。

49点以上であれば、高齢者講習を受けろということで、指定の自動車教習所に連絡して、予約を取るということになるが、この予約がかなり先まで埋まっていてなかなか取れないのである。空いている日は仕事が入っていてNGだったりする。国は高齢者は暇でいくらでも時間があると思っているようで、忙しい人のことは無視している。

確かに確率的には高齢者になるほど認知症の人が増えるけれども、若い人でも認知症の人はいるわけで、高齢者のみに認知機能検査を行うのは差別であろう。免許の更新時に全員に受けさせるというのなら公平であるが、認知症と運転不適格者は別の概念なので、この観点からも、この制度には問題が多い。

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