経済制裁どこ吹く風。世界の石油市場を支配するプーチンの恐ろしさ

 

ロシアとサウジアラビアが急接近する

ロシアとサウジアラビアは、昔から良好な関係だったわけではありません。近年、急激に接近した関係なのです。ロシアは、ソ連時代からイランと非常に良好な関係を持ってきましたが、サウジアラビアはイランと非常に仲が悪いのです。サウジアラビアはイスラム教のスンニ派の総本山であり、イランはイスラム教シーア派の総本山であるという宗教上の諍いもあります。

しかもサウジアラビアは第二次大戦後から一貫してアメリカの同盟国です。だからロシアとサウジアラビアは、これまであまり仲は良くなかったのです。

が、プーチン大統領は、サウジアラビアと積極的に交流を持とうとし、サウジアラビア側もそれに応えたのです。2017年10月には、サルマーン国王が、サウジアラビアの国王としては初めてロシアを訪問しています。このとき行われたプーチン大統領との首脳会談では、サウジアラビアは、ロシアからS-400防空システムを購入することになったとされています。アメリカの同盟国であるサウジアラビアがロシアから武器を購入するのは異例のことであり、ほかにはトルコしかいません。

また両国は、このときエネルギー、貿易などにおいても協定を結び、数十億ドルの共同投資にも合意したと見られています。ロシアが北極圏で行っている液化天然ガス開発「アークティック2LNGプロジェクト」にも、サウジアラビアは資金支援をする計画があります。

しかも2018年には、ロシアとサウジアラビアが結びつく重大な事が起きます。トルコのサウジアラビア領事館で、政府に批判的なサウジアラビア出身の記者ジャマル・カショギ氏が殺害され切断されるという事件が起きたのです。この事件をアメリカは重大視し、サウジアラビアの高官らに対して制裁措置を発令しました。またアメリカ政府は、皇太子への制裁はしなかったものの、皇太子が殺害に関与したことを報告書で発表しました。

もちろん、サウジアラビア側は、アメリカに猛反発し、両国の関係は急激に冷え込みました。しかしロシアは、この事件に対してほとんどアクションをしなかったので、サウジアラビアとしては外交的にロシアに依存する傾向が強くなってきたのです。

2019年6月には、サウジアラビアのムハンマド皇太子とプーチン大統領が、日本で行われたG20のときに、協調して石油の減産を行うことに合意しました。産油国にとって「石油の生産量を調整し価格を維持すること」は至上命題だったのです。

そして2019年7月、ロシアとOPECは、「OPECプラス」を恒久的な機構とすることを合意しました。「OPECプラス」というのは、前述しましたようにOPECと非OPECの主要産油国で形成されるいわば「産油国クラブ」のようなものです。

この記事の著者・大村大次郎さんのメルマガ

初月無料で読む

 

print
いま読まれてます

  • 経済制裁どこ吹く風。世界の石油市場を支配するプーチンの恐ろしさ
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け