プーチンの“怒りの炎”に油を注ぐ「クリミア攻撃」ゼレンスキーが犯した大失策

 

一応、ロシア政府は協力の姿勢を示していますが、原発からのロシア軍の撤退は「今回の受け入れの議題にはない」と受け入れない姿勢で、現在、原発をコントロールしているロシア軍がどれほど協力的かはわかりませんし、恐らくさほど期待はできないでしょう。

そうすると、IAEAの調査団による調査の有効性に疑問が呈されることになります。

今回の調査は本格的になるのか?それともただの見せかけなのか?

それはこれから見えてくると思いますが、各国の原子力の専門家は「本気なら、長期にわたって調査団はザポリージャ原発に残り、事態を見極めないといけない」と発言し、IAEAが計画している数日間の“調査”の有効性に疑問を呈しています。

とはいえ、長期に原発内に留まるのは、言い換えると国際的な専門家たちを今回の紛争における“人間の盾”化してしまうことも意味しますので、今回の調査団を“いかに有効的に使うか”を戦略的に考える必要があります。

ロシアが原発に駐留しているのは、切羽詰まっているからというよりは、戦闘とは別にウクライナ経済の生活インフラを締め上げるという別の作戦であると思われます。

それは、ちょっと強引かもしれませんが、ロシアに重度の制裁を課す欧州各国への“復讐”としてパイプラインのバルブを閉め、欧州各国(ドイツ、フィンランドなど)を締め上げている戦略に似ている気がします。

そしてロシアが切羽詰まっているか否かについては、4年ぶりに開催される大規模な軍事演習(東方戦線対応)の様子を見ればわかってくるかと思います。

そこに中国のみならず、中国を警戒し、ロシアとの適切な距離を保ちたいインドも参加し、他にスタン系の国々を含め、計12か国の軍が参加するのを、私たちはどう評価すべきでしょうか?

ロシアにはまだ余力があるのか?ロシアの関心は、中国と共に、東にも向けられているのか?ロシアとしては制裁を嘲笑うかのように、自らの支持者の存在を示したいのか?

これらの問いへの答えは、しばらくすると見えてくると思います。

さて、ここでウクライナ情勢から離れますが、ウクライナを舞台に鮮明化した綻びは至る所で表出してきています。

その一例が、イラクで爆発した大規模な武力対立です。

先の総選挙で多くの支持をえたサドル派(シーア派)は経済的に困窮する民からの支持を得ており、現政権がアメリカ撤退後のイラクの状況を改善できていないことに反発して、派の長であるサドル師(自らは議員ではない)が現政権の無能さに抗議するために政治からの引退を表明し、それに呼応した支持者たちが大規模デモを起こし、それが今週、武力による対立に発展したというシナリオです。

サドル師の“引退”宣言は実際にはサドル派を支持する民衆を動員するための作戦だと思われますが、結果として、ただでさえ政治基盤が脆弱な現政権の無力さがクローズアップされ、元々問題視されていた民族間・宗派間のいざこざに再点火して、今や、全土的な対立に発展しています。

まさしく内戦状態です。

その異常さは、首都バクダッドで政府機関が集まり、かつ外国の公館が集まるGreen Zone(イメージでは、東京の永田町・霞が関!?)まで紛争の火の粉は及んでおり、政府機能がマヒしていることを国内外に示す羽目になっています。

異常な状態を受け、イランは国境を閉じ、イラクへの直行便も止めるという措置を取っていますし、各国も大使館員を国外に避難させる措置を取ったようです。

ちなみに、サドル師はシーア派ですので、イランの暗躍が疑われそうですが、サドル派はイランとも対立関係にあるとされ、イラン政府も公式にも非公式にも関与を否定し、火の粉が飛んでこないように気を付けているようです。

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