プーチンの“怒りの炎”に油を注ぐ「クリミア攻撃」ゼレンスキーが犯した大失策

 

一つ目は国際的な対中制裁の発動にどれほどの国々が賛同するかですが、これはほぼ、今回のロシアに対する制裁への賛同国・反対国・棄権国のリストと一致してくるものと思われます。

おまけにロシア経済の規模(世界第10位か11位)に比べると、中国の経済規模はかなり大きく、どこまで世界1位か2位と言われる中国経済に“楯突くことができるか”を考えた際、ロシアに対するケースよりも、経済制裁の効果は薄れるでしょう。

そして、インドは知りませんが、中東諸国は、中国と25年間にわたる戦略的パートナーシップ協定を結ぶイランも含め、中国をバックアップすることになると予想されます。ゆえに、対中経済制裁は、さほど影響を持たないと思われます。

二つ目は、軍事的な視点です。これは今回のロシアによるウクライナ侵攻の状況を見れば分かります。ロシアの侵攻に対しては各国から非難が寄せられ、欧米諸国については、NATOの枠組みを通じた武器弾薬の支援が行われていますが、ロシアと直接的に軍事的な対峙は行っていません。

この状況に鑑みると、仮に中国が台湾に対して軍事侵攻を行った場合、各国からの非難は寄せられるでしょうが、軍事面では直接的に対中戦に参加せず、あくまでも台湾支援に限られるように思われます。

言い換えると、アメリカは台湾を全面的に支援するというものの、台湾有事の際に軍事介入はしてくれないと思われます。

勝手な妄想かもしれませんが、菅政権時代にバイデン大統領との間で「日本の防衛力強化」と「アジア太平洋地域における役割の増大」について合意されていますが、少し穿った考え方をしますと、台湾有事が勃発した際、極論を言えば、米軍は直接的には動かず、台湾と日本に軍事的な支援を行って、中国への対峙の最前線を台湾と日本に“押し付ける”ような気がしてなりません。

以前、中国の軍関係者やストラテジストと話した際には「日本と戦うなんて大それたことは考えていない。中国は中越戦争以降、実戦を経験していないし、ましてや世界を相手に戦ったことは近代においてはない。負けてもアメリカや世界と戦った日本の恐ろしさはよく知っている」とのことでしたが、有事の際、もし日本が意図せず、アメリカに支えられる形式で前線にいて、中国と対峙していたとしたらどうでしょうか。

そしてそこに北朝鮮がちょっかいを出して来たら?そして、その時、韓国はどちら側についているのか?そして、今回の4年ぶりの大規模軍事演習が“東”を対象にしているロシアはその時、どのように動くか?

このように考えたら、大げさかもしれませんが、我が国日本を取り巻く安全保障環境はとてつもなく厳しいものであることは想像できるかと思います。

そして、それは、決して現在進行形のウクライナでの戦争とは無関係ではないこともお分かりになるかと思います。

まとまりのない内容になったかもしれませんし、突拍子もないようなお話だとお感じになるかもしれません。

しかし、国際情勢を俯瞰的に眺めてみた際、このような分析もあるのだとお考えいただき、皆さんのお考えの一助にして頂ければ幸いです。

以上、国際情勢の裏側でした。

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