プーチンの“怒りの炎”に油を注ぐ「クリミア攻撃」ゼレンスキーが犯した大失策

 

イラクやアフガニスタンから国際的な関心や具体的な策を奪っているのが、中台間で目立ってきた緊張の高まりです。

ペロシ議長の訪台に始まり、私の記憶が正しければ、8月末までに4回、アメリカの連邦議会議員団が台湾を訪れ、アメリカの台湾支持を明確に打ち出しています。

これはペロシ議長の訪台後の「台湾は、アメリカにとって本当に支援する相手かどうかを見極めに行ったが、まさに中国に面しつつ、民主主義を堅持する友人であることが明らかになった」という発言を受けての大きな波ですが、10月16日に5年に一度の共産党大会を控え、自らの3期目の承認を控える習近平国家主席とその指導部にとっては、看過できない状況を作り出しています。

実弾を用いた大規模かつ本格的な軍事演習の実施や、経済的な制裁措置などを用いて台湾への圧力をかける北京政府ですが、アメリカの後ろ盾を得たと信じている蔡英文総統も負けじと最前線に赴き、中国への徹底抗戦を宣言して、もう双方、振り上げた拳を下げるタイミングを逸している状況になっています。

どこまでバイデン政権の対中・対台湾政策と合致しているかは精査が必要ですが、確実に11月以降の火種が生まれていることは確実でしょう。

ここでカギとなるのが、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて欧米諸国がロシアに課した経済制裁が“本当に”どれほど効いているのかという内容についての精査結果です。

全く効果がないとは言えませんが、かといって当初、予定していたほどの効果は出ておらず、天然ガスというエネルギー資源、金属や木材の資源、穀物…様々な“もの”を武器に、対ロ制裁の包囲網が崩されているのは事実です。

欧州各国については、エネルギーというインフラを握られ、ノルドストリームI経由のガス供給をテコに、プーチン大統領との我慢比べを強いられています。結果として、口先では厳しい口調でも、実際の制裁措置については及び腰になっているNATOの国もあります。

そこに第3極のインドがロシア産の石油と天然ガスを引き受けて、精製の上、国際マーケットに流すという“穴”が生じていますし、エネルギー需要が増え続ける中国も安価にロシアから供給を受けることで恩恵を被っています。そしてトルコについては、ウクライナにドローン兵器を売りつけながら、ロシアともしっかりと交易を続けていますし、UAEもサウジアラビア王国もロシアと非常に密接な関係を保つことで、経済的な恩恵を受けています(UAEについては、ドバイ─モスクワ間でエミレーツ航空が毎日7便直行便を運航しており、ほぼ満席だとか)。

このような距離感は、中国との距離感や台湾との距離感にも直接的に反映されています。

以前にもお話ししましたが、サウジアラビア王国もUAEも、多くのアフリカ諸国も、中国との関係を重視して、台湾関連の国際案件にはことごとく反対票を投じますし、中国が主張する“台湾観”に対して賛同し、欧米諸国を中心に、台湾海峡の問題を国際案件にすることに強く反対するという勢力となっています。

この勢力、ロシアによるウクライナ侵攻に対する各国の反応をベースに見えてきた第三極の国々と見事に一致します。

そうしてみた時、ちょっと注意深くシナリオを練ってみてくださいね。

仮に中台間で武力衝突が起きた際、どのような状況が見られるでしょうか?

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