プーチンの“怒りの炎”に油を注ぐ「クリミア攻撃」ゼレンスキーが犯した大失策

 

これが何を生むかと言えば、残念ながら一度は勢力を失ったとされるISの復活の兆しで、それはイラクの国としてのintegrityを失わせ、周辺国に対して再度、恐怖を投射することに繋がっています。

そしてそれは、滅茶苦茶にするだけして立ち去ったアメリカ政府とアメリカ軍への非難にもつながっているのですが、その影響については、またの機会に。

アメリカが立ち去り、ISが台頭し始めたと言えば、アフガニスタンを襲っている悲劇から目をそらすわけにはいきません。

8月30日で米軍の最後の飛行機がカブール国際空港を飛び立ってからちょうど1年が経ちますが、支配を取り戻したタリバン勢力は、国際的に正当な政府として承認されていないばかりか、日々、ISなどからのテロ攻撃に遭い、アフガニスタンに安定をもたらすことができていません。

アフガニスタンも例外なく、コロナのパンデミックの影響を受け、そこに大地震などの災害にも見舞われたことで、国民生活は破綻し、栄養失調の子供の割合が異常なレベルに達しているようですが、タリバン勢力に対する政府承認がまだほとんど存在しない中、国連も緊急安保理会議を開催したものの、懸念が表明されるだけで具体的な策が講じられないという悪循環に苦しめられています。

タリバンと言えば、女性の権利をはく奪しているという点がよく非難対象でクローズアップされますが、それ以外にもまったく国を動かすにあたってのキャパシティーが足りていない点を無視することはできません。

結果的にISによるテロを生み、それを抑えるために、一度は縁を切ったはずのアルカイダとの接触が噂されるなど、状況は悪化の一途を辿っています。

「イラクの状況や、アフガニスタンの状況のひどさについては分かったけど、それがウクライナとどう関係があるのか?」という質問があるかもしれませんが、これらのケースでも、ウクライナでの戦争で生じた国際社会の分断が影響しています。

イラクやアフガニスタンのケースに対しては、ウクライナ前は、主導権争いは存在しても、欧米諸国も、日本も、ロシアも中国も、そして周辺国も、経済的な権益の拡大という狙いの下に支援が行われてきました。それらの支援は国連を通じたものが多く、必ずしも効率的に支援が行われたとは言えませんが、まだ“協調介入”という特徴は残っていました。

ウクライナでの戦争がはじまり、世界が三極化する中、イラクやアフガニスタン、ミャンマーなどでの混乱や悲劇に対する非難や懸念の表明は行われるものの、支援とは程遠く、あくまでも“自らのサイド(極)に引き付けるため”という政治目的を持った接触に過ぎず、腰の据わった寄り添う形の支援は行われていません(ちなみに、ミャンマーのケースは別として、この寄り添い型の支援が上手なのが実は日本で、支援は継続されています)。

「とても気にはなるし、懸念を持っているけれど、今は具体的な策は講じられない」

ウクライナでの戦争をめぐる“陣地争い”の下、イラクもアフガニスタンも、じつは国際協調や支援が行き届かない悲劇の象徴になってしまっています。

これにはいろいろな方からご批判や非難があるかもしれませんが、もし私の思い過ごしや誤解であれば、指摘してくださいね。

しかし、私の知る限りでは、イラクやアフガニスタンの惨状については、皆、話すたびにため息をつき、懸念を述べるのですが、手は差し伸べられていないのが現状でしょう(そして、先週号で触れた第3極の国々にとっても、イラクやアフガニスタンは対象外のようです)。

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