9月9日から予約が始まり、16日から販売されるiPhone 14には、事故検知機能と衛星通信を利用したSOS発信機能が搭載されて、注目を集めています。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんが、新たな安心機能は広い国土のアメリカならではニーズを反映していると論評。それでも通信障害や災害時に有用な機能であることは間違いなく、日本でも衛星通信が使えるようになることに期待を示しています。
この記事の著者・石川温さんのメルマガ
iPhone 14が衛星通信に対応し、SOSを送信可能に──日本で衛星通信が使える日はいつになるのか
アップルはiPhone 14シリーズにおいて、衛星通信に対応し、SOSメッセージが送れるようにすると発表した。サービスは今年11月からアメリカ、カナダでスタートする。
サービス提供に際し、アップルは衛星ビジネスを手がけるグローバルスターに出資。リソースの85%を優先的に使えるようにした。iPhone 14シリーズではB53、n53の周波数帯に対応することで、衛星との通信が可能となる。ちなみに日本で発売されるiPhone 14シリーズもB53、n53に対応しており、アメリカに来て、山に登り、万が一、遭難してもSOSメッセージを飛ばすことが可能だという。
先週、スペシャルイベントの招待状について触れたが、宇宙を想像させるイラスト、「Far Out.」というメッセージはまさに衛星通信を暗示していたことになる。
アップルは衛星通信だけでなく、iPhone 14やApple Watch Series 8において、交通事故の衝突検知機能も搭載してきた。万が一、事故に遭った際、意識を失っても自動的に緊急通報を行ってくれるというものだ。
これらの機能を見ていると、やはりアメリカならではのニーズを反映しているように思える。日本で交通事故を起こしたとしても、周辺には他の車が走っているわけで、自ら通報しないと助からないという場面はあまりないと思われる。
しかし、アメリカのような国土が広い国となると、砂漠や山間部の道路で単独事故を起こすことが多いのだろう。衛星通信に関しても、国土が広いため、圏外の場所が圧倒的に多い。ならば、衛星通信で解決してしまおうという発想につながるわけだ。
ただ、衛星通信が日本でも使えるようになると、緊急通報がかけやすくなるということでもある。KDDIの通信障害時、「今後、通信障害が起きても緊急通報は何とか確保しないと。だから、ローミングを実現しよう」という話になりつつあるが、普通のiPhoneで衛星通信ができるのであれば「通信障害時は衛星通信を使えばいい」ということにもなりはしないだろうか。
地震や津波などの自然災害時も衛星通信で緊急通報だけでも確保できると安心だ。まず、アップルがサービスを開始するが、スペースXとTモバイルUSも衛星を打ち上げ、日本でもサービス提供してもらえると、複数の衛星通信を確保できることになるので、さらに安心だ。
アメリカ企業が、普通のスマートフォンで衛星通信ができるように取り組む中、ファーウェイも中国の衛星との通信を可能にしつつある。日本企業のなかで楽天モバイルだけが、衛星通信で存在感を出しているのが何とも面白い。
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