障壁は「昭和おじさん」か。男性と非正規の育休取得率が低いワケ

 

あの頃から比べれば、子育てへの理解は進みました。しかし、男性の4人に1人が、“昭和の化石上司”の壁に涙しているという現実を鑑みると、日本社会に根付く「性役割」の闇の深さを感じずにはいられません。しかも、非正規で働く人たちが4割もいるのに、男性はおろか、いまだに女性でも育児休暇を取れない現実もあります。

雇用形態別に女性の育児休暇取得率をみると、正規雇用の場合8割を超えますが、非正規の育休取得率は、わずか28.8%です。しかも、この数字には「出産で離職した女性」は含まれていません。以前、私が20代~30代の非正規雇用の人たちを中心にインタビューした際、「産休を申し出たら、そんなものないと言われ、仕方なくやめた」と話す人が多いことにショックを受けました。

実際には、非正規雇用でも取得可能なケースがあるし、妊娠・出産を理由とする解雇・雇止めも男女雇用機会均等法で禁止されているにも関わらず、拒否するのです。

なぜ、この国の人たちは、「子供を産み、育てる」という尊い作業を、みなでやろう!サポートしよう!と協力しないのか。なぜ、いつまでも「24時間働けますか?」「はい!」と即答する人しか「会社員」として認めないのか。

日本の育児休暇制度は、先進国の中でも「優しい制度」です。あまり知られていませんけど、かなり働く女性に寄り添うように制度設計されているのです。例えば、日本の育児休暇は、子供が1歳になるまで休業でき(必要と認められる一定の場合最長2歳)、賃金は雇用保険から従前賃金の40%の給付がある。

一方、ドイツやフランスでは、3歳に達するまでの最長3年間の休業が可能ですが無給(所得制限などの要件を満たせば養育手当などの給付を受けられる)。英国では、産前産後も含めて52週間の休業を取ることができ、5歳に達するまで両親合わせて13週間の休業可能で、無給。

スウェーデンでは、子供が8歳に達するまで、両親合わせて最長480日間の休業が可能で、360日の従前賃金80%が保障され、残りは決められた額が支給。米国では育児休暇はなく、Family Leaveという、家族に何かがあった時に取ることのできる休暇の権利があり、子供が1歳に達するまでに12週間の休業の取得が可能。基本的には無給ですが、州の失業保険が給付される。…といった具合です。

ただし、他の先進国は日本と異なり、「空いた穴」を埋める人員をきちんと整備したり仕組みがある。また、欧州では基本的に有期雇用が禁止されているので、すべての人が公平に取れます。

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