核使用にも反対。プーチンに対して間接的に「NO」を突きつけた習近平

2022.11.17
 

習氏にとって難しいバランシングを余儀なくされる対ロ関係

今日の国際社会において、インドと中国の置かれる政治的経済的立場は大きく異なる。バイデン政権が中国を唯一の競争相手と位置付けるように、中国の経済力は既に米国の7割近くにまで接近しており、今後それが逆転する可能性が高いとみられる。

そして、中国は経済力を武器に一帯一路戦略を広範囲に広げ、中国の影響力は既にグローバルに拡大している。よって、インド以上に中国は国際社会での立場に注意を払う必要があり、仮に今日でもロシアを庇う姿勢を鮮明にすれば、中国は欧米から制裁対象に加えられるだけでなく、国際的イメージを落とす可能性がある。プーチン大統領の一番弟子かのように振る舞うルカチェンコ大統領によって、ロシアの隣国ベラルーシは欧米からの制裁に遭っている。

米主導の国際秩序の打破を目指す中国としては、諸外国からのイメージが悪化することは避けないといけない。グローバルな問題である核兵器使用に明確にNo!の姿勢を示した背景にもそれがあろう。

以上のような諸事情を考慮すれば、3期目の習氏にとって対ロシアは難しいバランスを余儀なくされる。今後のプーチン大統領の出方にもよるが、ウクライナ情勢で今までのような態度を貫くならば、習氏としては友人で振る舞うことはできず、近づかず遠からずの距離で接することになろう。反対に、プーチン大統領の態度が軟化するようであれば(その可能性は低いが)、習氏としてはロシアと協力できる幅が広がることだろう。

一方、今後の米中関係にも影響しそうだ。台湾問題によって米中の対立がエスカレートすれば、中国としては米国を何かしらの手段でけん制する必要性が高まる。その際に有効な手段としてロシアの存在は大きく、たとえプーチン大統領の姿勢がこのままだったとしても、習氏としては自らロシアに接近する必要性が出てくることも考えられよう。いずれにしても、今後の習プーチン関係は、ロシアや米中対立の行方に左右されよう。

image by: plavi011 / Shutterstock.com

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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