立憲民主党所属の元衆議院議員・尾辻かな子氏(47)が、JR大阪駅の御堂筋線口で「女性の性的なイラストが広告として展示されている」と指摘し、ネット上で賛否両論を巻き起こしている。尾辻氏の意見に同調する人もいれば、「じゃあ男性だったらいいのか!」などと男性の半裸の写真やイラストを提示して反論する人も。中には「脅迫メール」を送りつける者までおり、反論もヒートアップしているようだ。
漫画「咲-SAKI-」とオンラインゲーム「雀魂」とのコラボ広告が炎上
「JR大阪駅の御堂筋口。こんな広告が…。2022年の日本、女性の性的なイラストが堂々と駅出口で広告になるのか…」
尾辻氏がTwitterでこう指摘したのは、青年漫画雑誌「ヤングガンガン」で連載されている「咲-SAKI-」と、オンライン麻雀ゲーム「雀魂(じゃんたま)」のコラボ広告。
JR大阪駅の御堂筋口。こんな広告が…。2022年の日本、女性の性的なイラストが堂々と駅出口で広告になるのか…。 pic.twitter.com/nsNlJCMiEr
— 尾辻かな子 (@otsujikanako) November 25, 2022
問題にされたのは、「咲ーSAKIー阿知賀編」に登場するキャラクター新子憧(あたらしあこ)と園城寺怜(おんじょうじとき)がバニー姿になっている2枚と、新子が海辺のパラソルの下でショートパンツがズレてビキニパンツが覗き見えている1枚、そして園城寺がカーブ階段の手すりの上に腰掛けスカートがヒラヒラと舞い上がっている1枚の計4枚だ。
他にもキャラクターが登場するポスターはあったが、尾辻氏の目には止まらなかったようだ。
このツイートが賛否両論の大議論を巻き起こしたため、尾辻氏はこのツイートに関してこうコメントした。
「JR西日本大阪駅の御堂筋口の改札通路は大阪の玄関口のひとつであり、多くの人が通行する公共空間です。その公共空間への広告が、例えば今回は、バニーの服を着、その服が脱げかけている、胸、大もも、股間のきわどい露出など、女性の性の商品化に無自覚であることを示していると思いました。環境型ハラスメントの類型にもあたり得るものです。そして、広告出稿ガイドラインをパスしたことも驚きました。広告出稿、広告掲示企業のジェンダー平等に対する社会的責任が問われています」
バニーガール姿のイラストは決して肌の露出が大きいようには見えないが、バニーガールがキャバレーで働く女性の制服として使用されていたこともあり、公序良俗に反すると感じる人がいてもおかしくないとも言える。
尾辻氏の発言に同調するコメントには、「制服姿の女子高生・原村和(はらむらのどか)のイラストも胸を強調しており、あきらかに性的だ」という声もあった。
さらに尾辻氏は同じコメントで、
「なお、漫画「咲」の登場人物は女子高校生の設定で、パンツを履いていない絵が描かれています」
と指摘。この発言を受けて、「咲」の読者が「1巻から15巻まで読み直したけど、パンツ履いてない場面なんてなかったけど……」などと反論。
尾辻氏は、
「では23巻を読んで確認してください」
と返した。
はたして尾辻氏の言うように「咲ーSAKIー」のキャラクターは本当にパンツを履いていないのか? そこで第23巻を読んで確認してみることにした。
検証結果:「咲」のキャラはパンツを履いていた
「咲ーSAKIー」は、麻雀がより世界に浸透している架空の世界が舞台。女子高生たちが麻雀の腕を競うという、かつての「麻雀放浪記」のようなギャンブル性ややさぐれ感を廃した、純粋な競技としての麻雀を描いている。
テレビアニメもシリーズ化され、浜辺美波や桜田ひより主演で実写ドラマ・映画化もされている。ギャンブルの匂いが強く敬遠されていた麻雀を、親しみやすいゲームとしてアピールし、若者の麻雀離れ抑制にも貢献している作品だ。
パンツを履いていない設定なら、浜辺らが出演するはずもなく、そもそも放送などできない気もする。
漫画のストーリーもほとんどが雀卓を囲んで展開しており、しかも登場人物はほぼ女性ばかりなので、ネット上でも「パンツを履いてないワケがない」という意見が大多数だ。
そこで実際に「咲-SAKI-」第23巻を確認すると、確かに一瞬、パンツを履いていないように見える場面がある。しかし、よく見るとうっすらパンツが描かれているようにも見える。
厳密に言うと、パンツを履いていないというよりも「パンツの部分をあえて描いていない」職人技という感じだ。
見ようによっては、パンツを履かずに臀部がむき出しになっているように見える人がいてもおかしくはない。と言っても「咲」は性的刺激が求められるような作品ではないし、そのように描かれていると解釈されたら、大騒ぎになっているはずだ。
パンツの描写自体にしても、バニーガールに対する先入観にしても、現在47歳である尾辻氏より上の世代から見ると、顔をしかめたくなるものということなのかもしれない。
尾辻氏の発言で懸念される「スラットシェイミング」とは?
今回の尾辻氏の発言は、むしろ「スラットシェイミング」にあたるのではないかとの意見も出ている。
スラットシェイミングとは、旧来の型にハマった行動や社会通念で行動を判断し、非難すること。
日本の漫画家は2021年現在で77.2%が女性、イラストレーターも2019年時点で68.4%と約7割が女性という。
「咲」の原作者・小林立氏は女性だとも言われている。一方で連載されているのは青年誌なので、女性のビキニグラビアが表紙を飾ったりもする。
麻雀漫画は絵が単調になりがちなため、合間合間に読者サービスでパンチラシーン(パンツがないのでパンチラにもならないが)が入りやすい面もある。
実は小林氏は2019年5月、自身の個人サイトのコメントで、「咲-saki-の世界は同性婚が可能」「登場人物の半分以上は同性愛者」と公表している。
これは尾辻氏の政治理念と一致しているようにも思えるが、「咲」の表層的な描写に気をとられて、作品の詳しい中身やバックグラウンドまで見る余裕はなかったようだ。