ウクライナ、安倍氏銃撃。2022年の重大ニュースが示した「日本のかたち」

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ロシアによるウクライナへの軍事侵攻や安倍晋三元首相の銃撃暗殺事件など、国内外ともに誰しもが目と耳を疑う歴史的大事件が起こった2022年。私たちはこの1年をどう振り返るべきなのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では著者で米国在住作家の冷泉彰彦さんが、2022年の主なニュースを総括。その上で、現在世界が何を問われているのかについて考察しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2022年12月27日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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ウクライナ戦争から安倍氏銃撃死まで。2022年をどう総括するか

2022年を見送ろうとしていますが、今回の「年忘れ」というのは、かなり難しい作業になるように思います。通常の年の瀬に行う回顧ということでは済まないように思うからです。

そこで、まず、主要なニュースを数点箇条書きにしてみることにしました。

  1. ロシア=ウクライナ戦争
  2. 中国新体制
  3. 欧米での「ウィズコロナ」定着
  4. FTX破綻
  5. TWTR、メタの迷走
  6. EV元年(?)
  7. QE2逝去
  8. 日本経済の衰退感顕著に
  9. 米中間選挙が見せた政治的均衡
  10. 米経済の強引な軟着陸ターンアラウンド
  11. 独クーデター未遂
  12. 安倍晋三氏遭難と宗教問題

この中で1.は回避できたかもしれない大事件が起きてしまったということで、明らかに政界史的大事件ですが、この1.を含めてすべての問題が現在進行形であり、2022年には全く決着がついていません。つまり課題として23年に先送られる内容ばかりです。7.のQE2逝去という事件も、立憲君主制(コンスティテューショナル・モナキー)というシステムの動揺が顕在化されたという意味では、終わりではなく始まりだからです。

前置きはそのぐらいにして、順に見て参りましょう。

まず、1.のロシア=ウクライナ戦争ですが、常識的にはプーチン体制という極めて権力集中型の政体が、プーチン自身の加齢と、過度に依存してきた化石燃料産業の衰退という2つの困難に対して、「敵を外に求める」という政治の常套手段に訴えた現象のように見えます。

それはそうであって、それ以上ではないのかもしれません。プーチンの加齢というのは、それによって判断が衰えたということもありますが、加齢に直面しつつ後継を選択するシステムがない中で、強引に求心力を維持しなくてはならない構造を露呈したということです。

ただ、この切り口というのは余りにも人間的であって、政治的考察を越えます。そこで、この1.という問題は、21世紀中葉に向かう中での、各国の領土・政体の正当性が問い直されたという切り口で考えたいと思います。

考えてみれば、1990年から91年にかけてのソ連邦の解体では、旧共和国の独立と、旧ロシア連邦の維持という「国境の線引き」がされました。この当時は、目立った紛争はアルメニア=アゼルバイジャンの紛争ぐらいで、この場合は旧共和国同士の葛藤ということでしたから、ロシア連邦の「国のかたち」という問題ではありませんでした。

ただ、90年代の後半にはチェチェン問題が顕著な問題として浮上。結果論としてはこの問題を利用することで、プーチンという人物は政治的な権力を手中に収めたのでした。また、チェチェンに関して極めて強引な解決をしたことで、「旧ロシア連邦内の自治共和国の独立は絶対に認めない」というロシアの「国のかたち」が事実上成立したわけです。

東欧から中央アジアにおけるソ連解体後の国境問題、あるいは「国のかたち」問題はこれで一段落したように思われました。ですが、今回のウクライナにおける熱い戦争は、「そうではない」、つまり旧ロシア連邦内だけでなく、旧ソ連の各共和国に対しても、プーチン体制は安全保障上、自国の勢力圏内としておかないと「安全感がない」ということを暴露してしまったわけです。

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