「ロシア有利」となるアメリカ共和党の対中強硬策
バイデン大統領は、中国との関係を維持して、ロシア包囲網を築く方向であり、共和党はロシアとの関係を正常化してでも、対中での強硬姿勢である。ホーリー米共和党上院議員は、「軍事資源には限界がある。米国は中国を抑止するためにウクライナよりも台湾を優先すべきだ」と述べた。
ここに米国の政治的な対立が、世界動向に影響しそうである。共和党の政策では、停戦を早期に実現することになり、ロシアに有利である。
しかし、バイデン政権内でも、ビクトリア・ヌーランド国務副長官は、戦争の目的は「クリミア半島の奪回とロシアのレジーム・チェンジだ」としたが、ブリンケン国務長官は「米国がウクライナにクリミアを占領するよう積極的に奨励してはいない」という。ブリンケン国務長官は、クリミアを奪還されたら、ロシアは核使用になる可能性があるので、それを避けたいようである。
そして、欧州各国は停戦すると、ロシアの侵略犯罪・戦争犯罪や人道に対する罪が罰せられないし、ロシアは反省することなく力を蓄え、再び侵略することになるとみている。このため、欧州諸国、特にロシア近傍国は、ウクライナを全力で応援することになるし、ドイツもやっと、全力で応援するようになった。
これに引きずられて、イスラエルもウクライナへの支援を本格化するようである。しかし、フィンランドなどは、自国防衛も視野に入れる必要があり、レオパルト2の供与を見送った。
ウクライナ戦争が長引くほど有利になる中国
この中、ミュンヘン安全保障会議が開催された。中国は王毅外交トップをこの会議に送っている。そして、習近平国家主席は、ロシアによるウクライナ侵攻記念日に「平和演説」を行い停戦を呼びかけるが、中国は当面高みの見物であろう。
また、会期中には気球問題で対立する米中間で、ブリンケン国務長官と王毅氏の会談も検討されている。ウクライナ侵攻が長期化する中、西側諸国は法の支配の重要性や戦争犯罪を訴えて対ロシア包囲網を広げたいが、中立的な立場の新興国・途上国の動向にも注目される。
パキスタンは、パキスタンの武器をウクライナに持ち込むためにポーランドと協力を開始したように、ウクライナ側により多くの新興国・途上国がついてくれるように、欧米は働きかけることになる。
G7外相会合で、ロシアを支援する第三者に「支援をやめなければ深刻な代償に直面する」と警告する議長声明をしたが、自国製ドローンをロシアに供与するイランを念頭に置いているし、中国も視野に入れているとみられ、G7による追加の制裁を示唆した。
マクロン仏大統領は、「ロシアを勝たせてはならない」という。また、国際法廷を設置する方向で検討をするともいう。これに対してポーランド首相は「ウクライナが勝たないといけない」という。ここでも、温度差が出ている。
一方、「ウクライナ戦争が長引けば長引くほど中国が有利になり、権威主義的な国家のトップがロシアから中国にかわるだろう」といい、かつ「中国は台湾にソフトに対応する一方で、地下金脈を通じて2024年総統選で民進党を敗北させるのが当面の目標である」と台湾の国策研究院の郭育仁執行長はいう。
世界秩序の大変革が起きているとも見える。
さあどうなりますか?
(『国際戦略コラム有料版』2023年2月20日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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