俳優で作家、参議院議員も務めた中村敦夫氏の小説『狙われた羊』が、昨年11月に再刊行されました。この小説を「統一教会のおぞましさがわかりやすく描かれている」と評すのは辛口評論家として知られる佐高信さんです。今回のメルマガ『佐高信の筆刀両断』では、統一教会の信者が自民党議員の秘書をしている問題を追求した議員時代の中村氏の言葉を紹介。統一教会が標榜する世界や家族の理想像のおぞましさや、政界、教育機関、産業界に静かに入り込んでいる実態について、40数年前には米下院の調査委員会が報告していたと、その記述を引いて伝えています。
報告書が明らかにした統一教会・文鮮明の野望
去年の秋に送ってもらっていながら、遅ればせに読んだ中村敦夫の『狙われた羊』(講談社文庫)が統一教会のおぞましさをテーマにして実にわかりやすかった。これはおよそ30年前に出た小説の緊急再刊である。
ニュースキャスターで参議院議員をやった中村は1993年にテレビで統一教会を批判して名誉毀損で告訴された。合同結婚式が問題になっていたころである。弁護士やジャーナリストと反論の記者会見をしたが、「ややこしい団体だから触れない方がという空気が一般的」だったのに我慢ならなかったのである。
議員になって、統一教会が自民党の議員に秘書を派遣していることなどを追及した。しかし、いつのまにかマスコミも取り上げなくなり、中村によれば「統一教会はより目立たないよう、深々と政治に入りこんでいった」という。
「3ジジ放談」の最年長ジジ、平野貞夫からもらった「文鮮明機関」についての「米下院フレーザー委員会」の報告書を読んでも、慄然とする。
文鮮明は「世界を支配するために、自然な政教一致国家をもたなければならない」とし、「神に中心をおく理想的な世界では、人はみな韓国語だけを話すであろうし、通訳は必要でなくなる」と言っているらしい。「宗教と政治の分離は、サタンがもっとも好むところ」なのだとか。
1971年以前にはアメリカの統一教会会員たちは自らの組織を「統一家族」と言っていたというのも注目すべき点だろう。家族にこだわるのである。そして、現実の父親ではなく、文が「おとうさま」となる。
日本の大学でも教会に直結する原理研がはびこったが、文は「学園は主要な戦場であり、もしそこで勝つなら、われわれは確実にアメリカを獲得できるだろう」と力説していた。そして、将来、アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、ドイツ、日本、韓国に「われわれ自身のりっぱな大学」をもつことを願っていたのである。
企業進出も報告書は明らかにする。まず、統一産業会社。「韓国政府によって国防上の注文の受注者として名をあげられている唯一の文鮮明企業」であり、空気銃、旋盤、フライス盤、ボイラー、およびM79型擲弾発射筒やバルカン機関砲の部品を製造している。これは1976年に米国務省がまとめた資料によればである。
2番目に一和製薬会社。これは主として日本人向けに人参濃縮液を製造輸出する目的で設立された。3番目が一信石材。石製の壺を製造しているこの会社は1975年度の総輸出高が60万ドルで、統一産業(日本)と「幸世商事株式会社」によって売りさばかれた。
報告書はまだまだ続くが、こんな教会と自民党が一体となっているのである。絶縁しようとはしていない。
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image by: Robert Granc, CC BY-SA 4.0, ウィキメディア・コモンズ経由で