ホンジュラスとの断交で露呈。「札束外交」で中国に勝てない台湾の限界

 

3月25日、北京で開催された中国発展ハイレベルフォーラムの年次会議でも、その問題に強い焦点が当てられた。例えば、同会議で講演した国際通貨基金(IMF)のクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事の以下の言葉だ。

「地政学的な分裂、すなわち世界が対立する経済圏へと分裂してしまう可能性がある。このような分断は非常に危険で、誰もがより貧しく、より不安な状態に陥ることになりかねない」

米中対立が本格的な冷戦の様相を呈するようになれば、アメリカが歓迎しない中国との取引は、ドルを仲介する形ではやりづらくなると予測される。それこそ中国が最大の貿易相手となった多くの国々にとって近い将来のリスクかもしれない。

そうした未来を見越してなのか、このところ世界では人民元取引を拡大しようとする傾向も顕著だ。3月28日には液化天然ガス(LNG)の人民元建ての決済、いわゆるクロスボーダー人民元建て決済取引が初めて行われたというニュースが話題となった。3月中旬には、中国とサウジアラビアが初めて人民元建て融資協力を実施するというニュースが世界の注目を集めた。

人民元が世界の貿易で占める割合は、現状ではまだまだ小さいと言わざるを得ない。だが先述したようにFRBの決定次第で、アメリカが世界のドルを急激に吸いあげ、新興国以下の国々の資金需要をたちまちひっ迫させてしまう事態も起きている。これに比べて人民元の現状は、金利や為替レートにおいて比較的安定した通貨とみなすこともできるのだ。

アメリカでは3月10日から12日にかけて2つの銀行が経営破綻し、世界に衝撃を与えた。一つはシリコンバレーバンクで総資産およそ2090億ドル。もう一つのシグネチャーバンクの総資産はおよそ1103億。アメリカの銀行の破綻としては、史上2番目と3番目の規模となった──
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2023年4月2日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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