「丁寧すぎる文章」がかえって解りにくい理由は?元大手新聞校閲センター長が解説

 

主語が消え、文意も切れる

さらに「おそってくる」の後に読点(、)があるので、ここでいったん文意が切れます。これを読むと「利用者」が主語のようでもあり、「利用者が次々に何をおそってくるのだろう」という疑問が生まれます。

実は「~の利用者さんも次々におそってくる、」は、その後の

コロナ禍のためにいつも心待ちにしている家族、親戚、友人との面会もままならず、買い物などの外出も極端に制限され、

につながっているのです。つまり、

~の利用者さん にも 次々 おそってくるコロナ禍~

という具合につなげたかったのです。そして、

それに施設内での行事も縮小され、寂しく心細い思いの日々を得ない状況になっているのです。

と、利用者の状況を説明したかったのです。ところが、

寂しく心細い思いの日々を得ない状況になっているのです。

という具合に、最後は意味の通らない表現になってしまっています。単純にここを直すなら、

寂しく心細い思いの日々を 過ごさざるを 得ない状況になっているのです。

としなくてはなりません。

全体を修正すると…

この1文全体をどういう風に直せばいいのか。少し手を入れてみましょう。

私は、社会福祉法人○○会に勤め ております 。私共の施設 だけでなく 、障がい者施設△△園・特別養護老人ホーム◇◇荘・地域密着型介護老人施設××園 でもコロナ禍の影響が出ています利用者は 心待ちにしている家族、親戚、友人との面会もままならず、買い物などの外出も極端に制限され ていますさらに 施設内 行事も縮小され、寂しく心細い思い を抱いています

という具合にすれば、少し読みやすくなるのではないでしょうか。

私は社会福祉法人○○会に勤め ております

と主語と述語がはっきりわかるように、言いきります。次に「様々な施設でもコロナ禍の影響が出ている」ことを明記します。続く文で、施設の利用者に主語を切り替えて、

利用者は 心待ちにしている家族、親戚、友人との面会もままならず、買い物などの外出も極端に制限されて います

とします。そして「さらに」という接続詞をつけて、

さらに施設内 行事も縮小され、寂しく心細い思い を抱いています

というように利用者の補足説明を加えるのです。

一つの文に、詳しく丁寧に書こうという意思は見えるのです。しかし、ことば余って思い足りず、の文になっているのです。

この記事の著者・前田安正さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 「丁寧すぎる文章」がかえって解りにくい理由は?元大手新聞校閲センター長が解説
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け