「丁寧すぎる文章」がかえって解りにくい理由は?元大手新聞校閲センター長が解説

 

投影資料にも同様の傾向

こうした例は、他にも見られます。投影資料を例にとってみます。

なお、本変更案件は2021年度、2022年度で別の変更案件になっておりますが、本件着手にて、2022年度分を省略させていただきたい。

「変更案件」ということばが2度も出て、「~なっておりますが、」と接続助詞の「が」がついています。一読して何を言いたいのかがわかりません。

なお、本変更案件は2021、2022年度では別案件になって いるそのため 2022年度分を 省略

文脈がわかりづらいのですが、ことばを整理すると少し理解しやすくなります。

体言止めをうまく利用する

また、「させていただきたい」という謙譲語を省略するために、体言止めをうまく使い「~を省略」という形にする手段もあります。

変更状況についてご確認いただき、以下の企画の承認をいただく。

という文も「いただく」が2カ所使われています。これも、体言止めを使って整理します。

変更状況についての 確認及び 以下の企画 についての承認

投影資料の場合、それを見せながら口頭で説明する形になります。

そのため、投影資料はできるだけ簡潔にまとめたほうが、視覚的にも理解度が早まります。

「簡潔に書こう」というと、必要な内容が欠落するのではないか、という疑問が寄せられます。簡潔に書くこととは、内容を省略することではないのです。

ここに、勘違いがあるのです。

丁寧に書くことと簡潔に書くことは、矛盾しないのです。

  • 過剰な敬語を使わない
  • 複雑な文は、分割してシンプルに

善哉とエビ天を美味しく食べるには、過剰な施しはかえって邪魔になるということを理解できれば、文章にもいい味が出てくることと思います。

(メルマガ『前田安正の「マジ文アカデミー」』4月5日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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未來交創株式会社代表取締役/文筆家 朝日新聞 元校閲センター長・用語幹事 早稲田大学卒業、事業構想大学院大学修了 十数年にわたり、漢字や日本語に関するコラム「漢字んな話」「漢話字典」「ことばのたまゆら」を始め、時代を映すことばエッセイ「あのとき」を朝日新聞に連載。2019年に未來交創を立ち上げ、ビジネスの在り方を文章・ことばから見る新たなコンサルティングを展開。大学のキャリアセミナー、企業・自治体の広報研修に多数出講、テレビ・ラジオ・雑誌などメディアにも登場している。 《著書》 『マジ文章書けないんだけど』(21年4月現在9.4万部、大和書房)、『きっちり!恥ずかしくない!文章が書ける』(すばる舎/朝日文庫)、『漢字んな話』(三省堂)など多数。

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