台湾ファクター
さて、サラリーマンさんは、いつ日本に引き上げるべきなのでしょうか?
国家ライフサイクルで、中国の2020年代は、日本の1990年代にあたります。投資家であれば、「引き時」というのが正しい判断でしょう。
しかし、たとえばアメリカから1980年代半ば、日本に派遣された会社員だったら?1990年初めにバブルが崩壊したらからといって、アメリカに急いで帰る必要はあったでしょうか?私は、なかっただろうと思います。だから、「何もなければ」サラリーマンさんがいそいで中国から日本に引き上げる必要はないと思います。
しかし、中国には、日本と違う事情が一つあります。それが、台湾問題。現状中国は、来年1月に行われる台湾総統選挙で、反中の民進党ではなく、親中国民党を勝たせようとしている。つまり、武力侵攻ではなく、
・親中国民党を勝たせる
・住民投票を行わせる
・台湾の「民意」によって平和裏に統一する
という「世論工作中心」の動きを重視するようになっています。しかし、反中の民進党候補が勝利して、独立の動きを強めれば、習近平は台湾侵攻を決断するかもしれません。そういう動きがあれば、迷うことなく帰国されることをお勧めします。
中国在住サラリーマンさんにお勧めしたいこと
ここからは中国在住サラリーマンさんにお勧めしたいポイントを挙げておきます。
まず、すでに「日本に引き上げたいと思われている」場合、会社と交渉することをお勧めします。
「2011年から、もう12年も中国に駐在しています。そろそろ日本に戻してください」と。
しかし、「まだ中国にいてもいい」と思われている場合は、焦って動かないことをお勧めします。中国経済は、すでに低成長時代に突入していますが、それでも14億人の巨大市場であることに変わりはありません。
ただし、情勢が変化し「台湾侵攻」が起こった場合、即座に引き上げてこられるよう、会社にも今から根回ししておきましょう。
注意したいのは、「戦争は突然起きる」ということです。なぜかというと、「相手が十分な準備を整える前に叩いてしまおう」と考えるからです。
しかし、情報時代ですから、中国の意図を隠し通すことはできません。ウクライナ侵攻についても、アメリカとイギリスの諜報は、正確な情報をつかんでいて、ゼレンスキーに警告していました。
中国についても、台湾侵攻の意図を隠しつづけることはできないでしょう。ただ、日々情報をウォッチしている必要はあります。
というわけで、サラリーマンさんが、ベストなタイミングで祖国日本に戻ってられるよう祈念しています。
(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2023年5月29日号より一部抜粋)
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