老後の沙汰もカネ次第。現代の「姥捨山」に放り込まれる貧困老人たちの恐ろしい実態

 

身寄りもなく貯蓄もない独居高齢者は、生活保護受給で「無届け介護施設」を頼るしかない!

それでは、年金も乏しく、身寄りもなく、貯蓄もない独居老人は、要介護の身の上になったら、どうなるのでしょうか。

最後の頼みの綱である「生活保護」で、不足する資金を賄っていくよりありません。

東京23区の場合、単身の高齢者は、最高で月額13万580円が最低生活費(生活費と住居費)ですから、介護が必要になった場合には、この範囲内の施設を探すしかありません。

当然ですが、公的施設の特別養護老人ホームには、要介護3以上なら入れるものの、前述の通り、つねに入所待ちで簡単には入れません。

特別養護老人ホームなら、最高でも月額6万円前後と費用が安いので、生活保護費の範囲内でも十分入所が可能です。

しかし、特別養護老人ホームには、簡単に入れないわけですから、そうなると介護を他人に委ねる形式では、貧困ビジネスの「無届介護施設」に入るしか方法がありません。

こういった施設なら、1人10万円以内でも入所が可能ですが、安い施設は、防火設備もなく、中には大部屋に布団を敷いて雑魚寝させる──といった信じられないほど不潔で劣悪な環境の施設もあるのです。

しかも、スタッフが少ないので、ロクな介護も期待できません。

要するに、これらは、タダのカネ儲けのための民間施設にすぎないからなのです。

厚労省によれば、2016年当時は無届介護施設が全国に1,207施設もあったのですが、近年は減少したものの、2022年6月時点でも626件(老人介護施設全体の3.8%)もあるといいます。

なぜ無届けで老人介護施設を運営するのかといえば、楽して儲かるからなのです。

「無届介護施設」が「必要悪」という日本の現実!

自治体に届け出て、新たに老人介護施設を開設するとなると、入居者の居住スペースや防火管理体制(スプリンクラー設置など)、介護スタッフ数などを厳しく規制されます。

しかし無届けなら、施設にカネをかけずとも、手っ取り早くベッドを並べるだけで商売が始められてしまうからなのです。

なんといっても、格安の「無届介護施設」の社会的ニーズはとても高いからです。

お金のない高齢者、生活保護受給の高齢者にとっては、願ったりかなったりの施設だからなのです。

なにしろ、費用は、公的な「特養」並みに近づけて、月額10万円以下の7万円、8万円に設定していても、手抜き設備と人件費圧縮でカンタンに儲かります。食事は安い弁当でもすませられます。

ゆえに、建設会社や土木工事会社、警備会社などの異業種が、建物の1階に訪問介護事業所を設け、その事業所の上階にベッドを並べて老人を入居させ、訪問介護の形態で「無届介護施設」を運営するケースが多いのです。

あるいは、ちょっと設備を加えて、小綺麗な施設に見せかければ、自治体への「届け出施設」と同様に「入所一時金」だって、預かることが可能になります。

入所一時金を低額の100万円や200万円に設定し、徴収しておけば、80歳以上の高齢者は、平均入所日数が1,164日(約3年2カ月)で死亡するか病院送りになりますから、「5年償却の入所一時金」であっても、入所時の初期償却で30%程度を丸取りしておけば、退所でもほとんど返却する必要もなくなるからです(厳密には入所90日以内はクーリングオフが適用できるので、初期償却も認められない)。

こんなところでも、行政当局は、身寄りのない、要介護の独居老人に対しては、生活保護を付けて、こういう施設への斡旋をガンガン行っているのです。

「無届介護施設」であっても、「必要悪」として、行政も半分だけ目をつぶらざるを得ない状況だからです(2018年4月からはこうした施設にも行政指導だけでなく事業停止命令も出せるようになったが、黙認も多い)。

安楽な老後も、カネ次第なのです。

つまり、行政も扱いに困って、「臭いものにはフタの厄介払い」方式で、こうした貧困ビジネスが繁盛することの「手助け」に回っているのが現状なのです。

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