早期退所や倒産でも「入所一時金」が戻らないケースもある!
ところで、民間でもリーズナブルな老人介護施設では、入所一時金をゼロ円にしているところが多くなっています。
この業界は、数千万円にものぼる超高額の入所一時金を預かるところと、100~200万円程度に抑えるところ、まったくゼロ円にするところと、3パターンに分かれています。
入所一時金とは、家賃の前払いの意味合いでの預り金のことです。
老人介護施設では、償却期間を5年程度にしているところが多く、「住宅型」や「ヘルシー型」施設の場合は、15年前後の償却期間をとるところが多いでしょう。
昔は、1,000万円の入所一時金を預かって入所させた高齢者がたった1カ月で亡くなり、遺族から入所一時金を全額返せ、いや3分の1しか返せない──といったトラブルが非常に多かったのです。
しかし、老人福祉法の2006年と2017年の改正に基づく段階的規制によって、現在では、すべての老人介護施設の入所一時金の保全措置を講ずることが義務化されています。
ゆえに、施設の規約においても、きっちり初期償却の方法や計算(初期償却のない施設もある)や償却方法(定額償却と低率償却)や期間を明示しなければならなくなっています。
また、入所一時金の他に「礼金」「権利金」「保証金」など、いかなる名目でもカネを得てはいけないことになっています。
しかしながら、こうした老人介護施設では、入所一時金の保全措置を講じていないところも少なくないのです。
2018年までの厚労省の調べでは、老人介護施設のなんと50件に1件の施設が保全措置を講じていなかったのです。
厚労省も舐められたものです。
これについても、その後の法改正で、最大500万円までの未償却分の保証が義務化されましたが、数千万円の入所一時金を払い、まだまだ多額の未償却分が残ったケースについては、ほったらかしなので、それについての保障は目も当てられません(こういう問題のレアケースはもともと金持ち老人だからスルーされている)。
カネがなければ「地獄の老後」という日本の未来!
そうはいっても、高齢者が死亡や入院などで、早期に退所することになった状況で、事業者がお金を返せないというケースも実際あるのです。倒産寸前では、カネがあちこちに消えます。
いざ、裁判所に破産措置が講じられたら、一般企業の破綻と同じで、かろうじて残った財産から、債権額に応じた按分弁済しか認められなくなるのは必定でしょう。
おまけに、倒産などの場合は、施設の建物を撤去する契約が地主と結ばれていた場合などでは、当然入居の高齢者は追い出されてしまいます。
老い先短いのに、住むところもない、カネも戻ってこない──という地獄の状況に直面するケースも実際あるのです。
むしろ、こういう事態は、これから増えていくでしょう。
こうした事態に直面しないためにも、老人介護事業者の実績や自治体の評価なども併せて慎重にチェックして、有料老人ホームを選ぶしかないのです。
まさしく自力救済するしか道はないのです。
いずれにしろ「老後の沙汰もカネ次第」という、切ない世の中に他ならないわけです。
年金を減額するしかない未来の日本の前途は暗澹としています。これが少子高齢化の帰結です。
少子高齢化を放置してきた世襲・反日・売国政党の自民党政権を支持し続けてきた日本国民の自業自得といえるでしょう。
今回はここまでといたします。
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