未だ権力側に立ち真実を伝える姿勢に転じない日本メディア
だが、ジャニーズの性加害問題については、社会問題化したので報道をしているが、その他のさまざまな問題について、権力側に立つことなく真実を伝えようという姿勢に転じたかというと、はなはだ疑問だ。
例えば、東京・文京区の住宅で木原誠二前内閣官房副長官の妻の元夫が死亡したことをめぐり、警視庁が「証拠上事件性は認められず、死因は自殺と考えて矛盾はない」としたが、遺族が改めて再捜査を求めていた件がある。テレビ・新聞など大手メディアは、ほとんど報道してこなかった。
遺族が殺人の疑いで警視庁に告訴状を提出し、受理されたことで、ようやく一部のメディアが報道を始めたが、権力の側に「忖度」して報道を自粛するかのような姿勢は変わっていないように思える。
今年、安倍晋三政権期の放送法の「政治的公平」の解釈変更に再び焦点が当たった。15年に高市早苗総務相(当時)が、国会で新解釈について発言し、それに基づく政府統一見解がまとめられた後、各放送局では政権に批判的なキャスターの降板が相次いだことだ。
メディア各社は真相を明かしていないが、自民党からの圧力を受けて「忖度」が働き、踏み込んだ政権批判を避けるようになったと思えてならない。放送法の解釈変更が「報道の自由」や「言論の自由」に深刻な事態をもたらしたのは確実だといえよう。
もし、ジャニーズ問題を契機に、「権力とメディア」の不適切と思える関係を変えたいならば、まず放送法の「政治的公平」の解釈変更を撤回するべきだ。だが、現在のところ、それを求める動きは政界からもメディアからも聞こえてこない。つまり、本気で変える気がないのだ。本質的な問題は、ここにあるのではないか。
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