Google日本元社長が評価。あの日本経済新聞が岸田政権に「苦言」を呈した“大きな意味”

 

税制についての正確な見識すらもない首相

この社説では、防衛費の大幅増強そのものの是非や、少子化対策のための安定財源確保の問題等には切り込んでいないので、追及が中途半端な感はあるものの、政権発足以来、支離滅裂で何をしたいのかが一向に見えない岸田政権に大手メディアがはっきりと苦言を呈したことの意味は大きいです。国民は、わずかばかりの一時的な減税などに惑わされてはいけません。防衛費増強その他の財源確保のため、結局は増税に向かうことは明らかです。本来であれば、社説もそこまで踏み込み、内訳さえ不明確なまま強行された防衛費の大幅増強の見直しそのものについて問題提起すべきです。

ところで、インボイス制度を前国会で議論していた時に、岸田首相は、消費税の法的定義について正しく理解していないことを幾度となくさらけ出していました。自身の政権維持にしか興味がなく、国家の運営にとって最も重要な税制についての正確な見識すらもない首相が、単なる一時的な人気取りや政局の為に脈絡もなく基幹税に手を出すのは明らかに一線を超えています。

今回取り上げた日経新聞の社説は、単に世論に迎合しただけなのかもしれませんが、「権力の監視」という本来メディアが果たすべき役割がまともに果たされなくなって久しいので、少し新鮮に映りました。

「経済、経済、経済」と連呼する岸田首相の所信表明演説で臨時国会が始まりました。「経済成長で増えた税収を国民に還元する」そうですが、短期的に好調に見えても、コロナ禍の落ち込みや物価高を加味すれば、日本経済は成長していませんし個人消費も伸びていません。参院本会議の代表質問では、身内である世耕弘成参議院自民党幹事長からも異例の突き上げを食らう始末です。今後の国会での議論とメディアの姿勢には引き続き注目していきたいと思います。

おまけ

毎日新聞が、25日の社説で、ここで取り上げた21日の日経新聞の社説とそっくりな内容の社説を掲げていました。明らかにコピペしたような言い回しも散見されました。他社の社説を恥じらいもなく自社の社説に転用する姿勢に、あらためて大手メディアの劣化を感じざるを得ませんでした。

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辻野 晃一郎(つじの・こういちろう):福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。

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【著者】 辻野晃一郎 【月額】 ¥880/月(税込) 【発行周期】 毎週 金曜日 発行

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