一億総「ハァ?」状態。経済オンチ岸田文雄は“支持率低下の原因”さえ理解していない

 

アベノミクスとスガノミクスの悪い面だけを継承

根本的な原因は、岸田が経済についての見識はもとより、基礎的な知識さえも持ち合わせないため、アベノミクスとスガノミクスの悪い面だけを継承して抱き合わせにしたような混乱ぶりに陥っていることにある。

アベノミクスは、本誌が10年前の第2次安倍政権の登場の頃から指摘し続けてきたように、そもそもの始まりからして間違っていた。日本は総需要が総供給を下回るデフレギャップ下にあるのだから、日銀がお金を大量に印刷してバラ撒く「異次元緩和」という金融的ショックを与えて眠っている需要を揺り動かせば、たちまち景気は良くなると想定したのだが、藻谷浩介がその何年も前に『デフレの正体』(角川新書、2010年刊)で指摘したごとく、経済停滞は「生産年齢人口の減少」という長期的・構造的な原因によるものなので、そのやり方は全くの見当違いだった。

それに加えて、小野善康が言うように、資本主義がうまく行ってモノが満ち足りた成熟社会になると、もっとモノを買いたいという欲求が少なくなり「お金のまま持っておきたい」という「資産選好=貯金フェチ」が広がるので、それが停滞に輪をかけることになる(原直人『アベノミクスは何を殺したか』=朝日新書、23年刊、小野インタビュー)。

本当は岸田は、その根源にまで遡ってアベノミクスの大失敗を総括し、綺麗サッパリと清算した上に「新しい資本主義」なり何なりを打ち立てなければならなかった。が、就任以来「何をしようとしているのか分からない」と言われ続け、それを脱却するために安倍国葬“決断”を機に「安倍エピゴーネンに徹すればいいんだ!」と踏み切ってしまった岸田に、アベノミクスの清算などできるわけがない。

それで今回の演説で、ガソリンや食料品はじめ生活必需品の円安インフレに苦しむ人々に対し、来年6月に本人・扶養家族を問わず1人当たり4万円×9,000万人=3.5兆円程度の規模で「所得税・住民税の定額減税」を約束したのだが、「半年後に?1回限り?4万円?」と全く有り難みの実感が湧かない程度の規模とタイミングであることに加え、その目的を「デフレ完全脱却のため」「デフレマインドからの転換を今こそ」と説明するなど、アベノミクスの誤りを引きずったままの混濁したメッセージを伴うモノであったため、余計に人々の心に響くことがなかった。

それにスガノミクスの悪い面が重なった。菅義偉元首相には凡そ経済政策らしきものがあった試しはなく、第1次安倍政権の総務相として彼が始めた「ふるさと納税」をはじめ、第2次安倍政権の官房長官として関わったコロナ禍関連の各種支援金やポイント制度、マイナカード普及のためのマイナポイント、携帯電話の値下げ等々、ことごとくが「小銭が転がり込んでちょっとお得で嬉しいでしょ」といった、卑しいとまでは言わないが、余りにも庶民的?な感覚の方策ばかりで、国の進むべき方向をどうするといった次元の話からはかけ離れていた。岸田は、菅のこの劣悪面も受け継いで、「半年後ですけど1人4万円はちょっと嬉しいでしょ」という愚劣なくすぐりをやってしまったのである。

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