【記事の要約】
この研究は、米国国民健康栄養調査(NHANES)から1999~2010年のデータと死亡記録(National Death Index)データを関連づけて分析したもの。20歳以上の米国成人3万899人を対象に、食品およびサプリメントからの栄養素の摂取量と死亡率との関連を前向きに調べた。
その結果、対象者の半数以上が1種類以上のサプリメントを摂取し、3分の1以上はマルチビタミンを摂取していた。また、サプリメントの中ではビタミンCの摂取頻度が最も高く、ビタミンE、カルシウム、ビタミンDが続いた。
中央値で6.1年追跡した結果、全般的なサプリメントの常用と死亡率との間には関連は見られなかった。
一方、ビタミンAとビタミンK、マグネシウム、亜鉛、銅を適度に摂取すると、全死亡率または心疾患や脳卒中などの心血管疾患による死亡率は低下することが示された。しかし、これらのリスク低減効果は、栄養素を食品から摂取した場合に限られることも分かった。
さらに、カルシウムの過剰摂取は、がんによる死亡リスクの増加と関連することも示された。
Zhang氏によれば、米国人口の半数以上が何らかのサプリメントを常用しているが、「今回の結果からも、健康な人ではサプリメントによるベネフィットは得られないことは明らかだ。サプリメントは栄養バランスに富んだ食事の代わりにはならない」と述べている。
また、栄養素を食品から摂取した場合とサプリメントから摂取した場合で有益性に差が出た理由は明らかになっていない。
この点について、Zhang氏は「食品から摂取した場合には、身体が栄養素の吸収を調整したり、制限したりできるのに対し、サプリメントでは、こうしたコントロールができないためではないか」と説明している。
この研究には関与していない米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・ヘルスの管理栄養士であるSamantha Heller氏は「一種類の栄養素を摂取したからといって健康上の問題が解決するわけではないが、状況によっては栄養素の補充が必要なこともある」と指摘する。
その一例として、完全採食主義者ではビタミンB12やビタミンD、オメガ3脂肪酸など特定の栄養素が不足しがちなことを挙げている。
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