中国に人民解放軍の北方領土駐留を打診する可能性も
そして、ロシアは軍事的地固めもいっそう強化している。今年4月、ロシア軍は択捉島周辺の海域でミサイル射撃訓練を含む大規模な軍事演習を行い、2万5,000人あまりの兵士が参加した。この訓練では、敵対国が択捉島などに海上侵攻することを想定した防衛訓練が行われたというが、既にロシア側には日本との領土紛争はないという認識だろう。
ウクライナ侵攻直後の2022年4月には、国後島と択捉島にある2か所軍事演習場で、対戦車ミサイルシステムや自走砲などの実弾発射を行う軍事訓練が行われ、1,000人以上が参加し、その前月にも軍事訓練が行われ、その時は3,000人あまりが参加した。去年3月末には、根室市の住民から相次いで地鳴りのような音がし、海の向こうから赤い光のようなものが見えたとする通報が海上保安庁や警察に相次いだ。近海をパトロールする海上保安庁は、国後島から照明弾のような光が複数回確認されたと発表し、ロシア側からは国後島南東部で射撃訓練を行うとの連絡があったとされる。
今後、米国と中国、ロシアを巡る大国間対立がいっそう激化すれば、中国を共闘パートナーとするロシアは、人民解放軍の北方領土駐留などを中国側に打診する可能性も十分に考えられよう。
ウクライナ侵攻以前から、プーチン大統領は北方領土で既成事実化を進めてきたが、侵攻による日露関係の悪化により、プーチン大統領は北方領土問題で日本側に聞く耳を持たなくなっている。これは今後も続くだろう。ウクライナ侵攻により、我が国固有の領土である北方領土はこれまでになく遠い領土になっている。そのうち、北方領土はロシア領だとする国際的意見が広がるかも知れない。
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