EUとの相違点ばかり強調。いつまでも“的外れ”な日本メディアの中国分析

 

EUへの習のラブコールは、メディアが書いたような「変化」ではない。そのことは過去の会談内容と比べても明らかだ。例えば、2014年には「中国はEUと協力して、平和の陽光が戦争の霞を追い払い、繁栄の篝火が寒い春の世界経済を温め、全人類が平和的発展と勝利の道を歩み始めることを促進する用意がある」と習は語っているのだ。

むしろ中国は、アメリカ追従で政治的な対立にEU側が傾くことを警戒し、3つの「べからず」を提案している。その内容は、「体制が違うからといってお互いをライバル視してはならない」「競争のために協力を減らしてはならない」「意見の違いを理由に対抗してはならない」というものだった。

中国とヨーロッパの貿易は、政治的な空気とは裏腹に伸び続けている。貿易額は依然として過去最高を記録していて、対前年比で2.4%増の8473億ドルに達し、互いに第2の貿易相手国であり、両地域間では毎時間約1億米ドル相当の商品が流通しているといわれている。

イタリアが正式に離脱したとはいえ「一帯一路」での結びつきも相変わらず強い。実際に中国とヨーロッパの貨物列車は、欧州25カ国の217都市を結んでいて、今年9月末時点で累計7万8000両を超えた。中国は、こうしたニーズがあるにもかかわらず、政治がそれを阻害しかねないことを警戒している。

イタリアの「一帯一路」からの離脱の影響は、実際のところはほとんどない。ただ、離脱を決めた動機が同国の政権交代であったことに中国は不安を覚えているのだ。強硬右派「イタリアの同胞」を率いるメローニ政権の誕生である。

背景にあったのはアフリカ・中東からの大量の移民の流入に国民が不満を募らせていたことだ。そして同じような問題は、いまヨーロッパ全域に拡大しているといっても過言ではない──(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2023年12月10日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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