台湾人も標的に。トランプ返り咲きで復活するスパイ狩りの無法

 

こうした影響は中国一国にとどまらない。

トランプは昨年7月、FOXニュースとのインタビューで台湾問題に言及しているのだが、このとき中台関係について問われ、「(答えれば)交渉上で非常に不利な立場に追い込まれる」とことわった上で「とはいえ、台湾はわれわれの半導体事業のすべてを奪った」と語っている。

アメリカ第一主義を掲げるトランプの対東アジア政策は、対中国だろうと対日本、または対台湾であろうと、常に「アメリカが被害者」という考え方がベースになっていて、それは価値観の違いより優先されていることを露呈させた。

チャイナ・イニシアチブの入り口で起訴されたのも、アイダホ州の半導体企業マイクロンから企業機密を盗み、中国の国有企業が最終的に利益を得られるようにしたと疑われた3人の台湾人だった。

同盟関係を重視するバイデン政権には、民主主義の価値観での紐帯を強調することで台湾はアメリカにアピールできた。しかし、トランプが大統領に返り咲いた後のアメリカに庇護を求めようとすれば、台湾は虎の子の半導体分野で大幅な譲歩という犠牲を強いられるかもしれない。

蔡英文政権の後を争った台湾総統選挙では与党・民進党の候補、頼清徳副総統が勝利したが、得票率は伸びず、40%にとどまった。かねてから課題の内政への不信、就中経済政策への不満が反映された選挙結果だ。

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その民進党がずっと頼ってきたのが島内に広がった対中警戒心だ。台湾では総統選挙の前後から、「中国の気球が頻繁に台湾に近づき横断した」との発表が相次いだ。

台湾国防部は、「(中国は)武力攻撃に至らない、いわゆるグレーゾーンの手法で台湾の民心に影響を与えようとたくらんでいる」との説明を加えた。

だが気球といえば思い出されるのは2023年2月、米本土上空に現れた中国の気球を「偵察気球」だとして撃墜した事件だ――(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2024年2月4日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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