小林製薬「紅麹」禍を招いた、安倍晋三元首相の「演説」と「功績」…陰謀論ではないアベ友と機能性表示の闇(辻野晃一郎氏)

 

児玉龍彦東大名誉教授が筆者に語った、小林製薬の危険な内実

次に小林製薬についてですが、以下は、私が信頼している科学者の1人であり、ユーチューブ番組などでもしばしばご一緒する東京大学先端科学技術研究センターの児玉龍彦先生から直接伺った話です。

小林製薬という会社について、以下のように論評しておられます。

小林製薬は、基準の厳しい医薬品ではなく、機能性表示食品などを多品種、短期に、次々、発売し続け、経産省の、今年の健康経営優良企業に表彰されています。 https://www.kobayashi.co.jp/newsrelease/2024/20240311/

しかしながら、小林製薬の内実は、衛生材料企業から、販売優先の機能性表示食品などに転換して成功した「曖昧なものを圧倒的な宣伝戦略でカバーする」アメリカで巨大化しているサプリ産業の輸入版、ともいえます。でもアメリカ人の寿命は世界の先進国の中では低い方です。

実は世界の医薬品は、ゲノム配列などの膨大な情報をもとにした精密医療(プレシジョンメディスン)という方向に進歩しています。ところがその周辺では、金儲けのために、曖昧なサプリメント市場が巨大化します。また、医薬品でも新規開発が大変になるにつれ、ジェネリック医薬品の製造で儲けようとします。

小林製薬は、膨大な宣伝をもとに、地道な研究開発というよりは、買収、売却を繰り返し、すぐに売れる商品をすぐに売って儲ける「お金があったらいいな商法」です(注:小林製薬は、「“あったらいいな”をカタチにする」をスローガンとして掲げています)。紅麹製造も、カビの培養に経験があまりない小林製薬が、グンゼから買い取ったもので、記者会見などでも、経験を持った技術者が少なく見えます。

日本の製薬業界が、コロナ禍で4兆円の貿易赤字となる中で、多くの企業が、画期的医薬品の開発ではなく、サプリメントなどに走っています。小林製薬は、今回以外にも不祥事を起こしています。08年には銀イオンによる除菌効果をうたった消臭剤など15製品の効果が十分でないとして自主回収し、2製品の表示について公正取引委員会から景品表示法違反(優良誤認)で排除命令が出ています。また11年には、子会社が医療器具の承認申請時に改ざんしたデータを提出していたとして、旧薬事法に基づく業務停止命令も受けています。

今回の小林製薬による健康被害は、まさに利益誘導型の筋の悪い人たちによる悪しき規制緩和と、それに乗じた利益優先主義の筋の悪い企業の組み合わせが引き起こした典型的な事件と言えるのではないでしょうか。

また同時に、新薬開発などのハードルの高いチャレンジを避け、手っ取り早く稼げる市場で稼ごうという安きに流れる利益優先主義を象徴しています。このようなメンタリティは、全体的に日本の技術力や産業力を衰退させた一因でもあるでしょう。

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