個人事業主を完全無視の老後2000万円問題。実は「5600万円問題」

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金融庁が発表した「老後に2,000万円が必要」という報告書。政府はなかったことにしようとしていますが、それで済まされる問題ではないと追求するのは、メルマガ『8人ばなし』の著者の山崎勝義さんです。山崎さんは、そもそも例の試算は、恵まれた人たちの話であり、自分も含めた周囲に多くいる個人事業主で同様の試算を提示し、苦しい方、ひどい方は無視し、見て見ぬふりをするこの国の悪癖を批判。真面目に議論される気配のない「年金の一本化」の議論を喚起しています。

老後のこと

ついうっかり出て来てしまったような情報にこそ真実がある。それが重要政策に関わることならなおさらである。所謂「老後2000万円問題」もそんなふうに、ある時ぽろりと出て来た情報であった。 この試算はさまざまな方面で議論を巻き起こしながらも、財務大臣が受け取りを拒否するといった無茶過ぎる手際でもって無理矢理に片付けてしまった。

業腹なので、一応言っておく。「我が国には金がないのだろう?」。貴重な税金を使って受け取りもしないものをわざわざ作らせないでもらいたい。こうしたシミュレーションだって只で出来るものではない。国民をバカにするにもほどがあろう。
そういう訳で、無理矢理に片付けられた物なら、無理矢理に引っ張り出しても構わない筈だから、ここではしつこく採り上げさせてもらうことにする。そもそも「老後2000万円問題」とは以下のような試算に基づいている。

高齢夫婦無職世帯の厚生年金の平均受給額21万円、毎月の支出26万5000円、よって月々5万5000円の不足。結果1年で66万円の赤字、30年だと1980万円の大赤字となり、これに備えるには2000万円程度の貯蓄が必要となる。

これでは誰だって不安になる。今まさに老後の生活に入ろうとするその時に、自分の貯金通帳を見れば残りの人生セーフかアウトかが自ずと分かってしまう。これはさすがに恐ろしい。

しかしながら、この試算はその実あまりに楽観的とも言えるものなのである。というのも個人事業主(フリーランス)の存在を完全に無視したものだからである。 個人事業主や、常勤の従業員が5人未満の個人事業所で働く人が加入しているのは国民年金である。その場合だと、仮に満額受給されたとしても月額6万5000円ほどである。平均をとると一人当たりの受給額は大体5万5000円くらいになると言う。
これを先の試算に当てはめてみる。

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