感染対策とGoToの「二兎」を追って感染拡大を招いた菅政権の愚

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新型コロナの感染拡大を防ぎながらGo Toキャンペーンを、という「感染拡大防止と経済活動再開」の両立を目指してきた菅政権ですが、ここにきて感染拡大に歯止めがかからず、肝煎りの「Go To」も一時停止となってしまいました。軍事アナリストで危機管理の専門家でもある小川和久さんはメルマガ『NEWSを疑え!』の中で、「二兎を追うものは一兎をも得ず」のことわざを地で行く危機管理の欠如を厳しく批判。短期の「不自由」を国民にお願いせずに「二兎」を追った政権が今後とるべき対策について論じています。

二兎を追った挙げ句の感染拡大

東京都で過去最多の539人の感染者が発生した21日、「感染拡大防止と経済活動再開」の二兎を追ってきた菅義偉首相も、ついに「Go To」キャンペーンの一時停止に舵を切りました。このあと東京都は3日連続で500人を超え、22日には大阪府も400人を超える事態となっています。(編集部註:27日は570人で過去最多を更新)

「政府は21日、新型コロナウイルス感染症対策本部(本部長・菅義偉首相)を首相官邸で開き、一部地域での感染者急増を踏まえ、需要喚起策『Go To』キャンペーンの運用見直しを決めた。トラベル事業は、感染が拡大している地域での新規の予約受け付けをいったん停止する。イート事業でも、プレミアム付き食事券の新規発行を一時停止する。

首相は対策本部で、政府の20日の対策分科会が示した提言を踏まえ『感染拡大が一定レベルに達した地域ではその状況を考慮し、都道府県知事と連携し、より強い措置を講じる』と表明した(後略)」(出典:2020年11月21日付時事通信

その直前までは、神奈川県の黒岩祐治知事の考え方を支持し、「マスク会食」を奨励していた菅首相ですが、さすがに危機感を抱いたようです。

そこで今回は、危機管理の基本である「二兎を追うものは一兎をも得ず」ということについて、いま一度、整理をしておきたいと思います。

まず危機感が欠けている問題があります。もし日本政府と国民に「生命の危機」という認識があれば、感染が大幅に拡大している段階で感染拡大防止と経済活動の両立を求めたりしないはずです。

物事には順序があります。当然ながら、最優先課題は感染拡大を抑え込むことです。そのためには、一定期間にわたって国民の行動を規制するロックダウン(都市封鎖など)は避けられません。ところが、政府は外出や経済活動について「要請」を繰り返すことに終始しました。これは自由を奪われることへの国民の不満や、事業主などからの補償要求の噴出を恐れ、忖度したからです。新型インフルエンザ等対策特別措置法にも強制力を備えさせませんでした。第三波と思われる今回の感染拡大は、二兎を追った挙げ句に生じたことを忘れてはなりません。

考えればわかることですが、収束が遅れるほどに医療は崩壊するし、政府は補償措置を繰り返すことになります。経済活動は停滞し、予算編成も税収減を前提としたものにならざるを得なくなるでしょう。長引くほどに補償金額は細り、財政を圧迫する恐れすら出てきます。これは悪循環そのものです。

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