不気味な中国の動き。ロシア「ウクライナ侵攻」に沈黙を貫く隣国の思惑

shutterstock_2128607468
 

ウクライナに対し、多くの専門家たちの予想を遥かに超える大規模な軍事行動に出たロシアのプーチン大統領。国際法に照らしても決して許されない行為であることは明らかですが、この先事態はどのような推移を辿るのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では著者で元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、欧米諸国と同盟国が取るべき対応を考察。さらにこの事案に対して不気味な動きを取る中国の思惑を推測するとともに、ウクライナ危機は日本にとって決して「対岸の火事」ではないとの警告を発しています。

【関連】プーチン方式を踏襲か?中国は「ウクライナ危機」のどさくさで尖閣を侵略する

国際情勢の裏側、即使えるプロの交渉術、Q&Aなど記事で紹介した以外の内容もたっぷりの島田久仁彦さんメルマガの無料お試し読みはコチラ

 

大ロシア帝国再興への大博打? ウクライナ紛争

北京冬季五輪が閉会した次の日、2月21日にロシアはウクライナおよび国際社会に対して攻勢をかけてきました。

予てよりウクライナ東部でロシアと国境線を接するドネツク州とルガンスク州のロシア系勢力支配地域を共和国として国家承認し、リーダーたちの依頼に基づいて、ウクライナからの軍事的な圧力に対抗するためにロシアに軍事支援を依頼させるという“芝居”をうって、ウクライナ侵攻に向けた大きな一手を打ちました。

2014年のクリミア半島併合事案の際にも用いられたレトリックですが、「ウクライナによって迫害されている同胞ロシア人の生命と利益を守るため」との理由から、ドンバス地方(ドネツク州とルガンスク州が位置するウクライナ東南部)へのロシア軍の“派遣”を決め、平和維持活動に当たらせるという形式をとりました。

当初、この発表がなされた際、私は「ロシア人支配地域(共和国化したところ)が対象であって、両州全域の併合までは考えていないだろう」と高を括っていたのですが、24日未明に行われたロシア軍による攻撃は、ドンバス地方に対するSpecial Military Operationと位置付けられてスタートしました。その後の展開はご存じの通り、ベラルーシで合同軍事演習を行っていた部隊はウクライナ北部から、そしてウクライナ南部の街オデッセイにはロシア海軍と陸軍の行動作戦として、ロシアが上陸し、どう見ても「ロシアによる対ウクライナ全面侵攻(Full scale military invasion)」という形式になりました。

首都キエフ、ハリコフ、オデッサなど数多くの街で爆音が何度も響き、キエフではサイレンが鳴り響き、ロシア軍によるミサイル攻撃・空爆への警戒が叫ばれました。

このタイミングと同じころ、NYの国連では安全保障理事会が緊急招集され、ウクライナの国連大使がロシアによる侵攻を非難し、安保理理事国すべてがすぐにこの侵攻を止めるべく動くべきと訴えていました。

残念ながら、皆さんご存じの通り、真っ向から対立するロシアの反対(そしてロシアが今月の安保理議長国ゆえに、議事進行の権限を持っている)と、態度を明確にしない中国によるブロックで、国連安保理は何も効果的な動きが出来ないという状況に陥りました。常任理事国が直接的に絡む案件ですから、もちろん同意されるようなことはないのは明白なのですが、国際世論形成に最後の望みをつなぐ動きも、無残に終わりました。

そして「ロシアによる侵攻はない」と言い続けてきた私の予想も、見事に外れました。申し訳ございません。

どうしてこんなことになったのでしょうか?

いろいろな方たちが解説されていますので、あまり詳しくは論じませんが、一言でいえば、ロシア・プーチン大統領に経済制裁の厳格化でプレッシャーをかけていた欧米諸国がプーチン露大統領の意図を読み違えた、または理解できなかったから、と言えるのではないかと考えます。

国際情勢の裏側、即使えるプロの交渉術、Q&Aなど記事で紹介した以外の内容もたっぷりの島田久仁彦さんメルマガの無料お試し読みはコチラ

 

print
いま読まれてます

  • 不気味な中国の動き。ロシア「ウクライナ侵攻」に沈黙を貫く隣国の思惑
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け