台湾地震で恩返しする日本人と、政治利用を目論む中国人

 

一方、1999年の台湾大地震の際、もちろん中国の援助隊などは台湾に来ていません。たとえ申し出があったとしても、断っていたことでしょう。にもかかわらず、中国は「一つの中国」を前面に出して、各国に対して「感謝する」という政治的パフォーマンスを行い、台湾人の顰蹙を買いました。だいたい、国連のみならず、WHO(世界保健機構)にすら、台湾は中国の妨害で加盟できていません。こうしたことの積み重ねが、台湾人の中国離れを加速させていったのです。

中国では大地震に限らず天災があるたびに、「幸災楽禍」、つまり人の不幸を大喜びするというメンタリティが発揮されます。たとえば四川大地震のときには北京市民は大喜びで、「もっと死ね」という声がネットを中心に広がりました。インド洋の大津波のときも、「これでインドが中国を追い越せなくなった」という喜びの声がネットに殺到、さらに9・11のアメリカ同時多発テロでは、アメリカ国務省に招待された中国のメディア関係者が、テレビを見ながら喝采を叫んだことが、現地の新聞などでも報じられました。

もちろん中国はプロパガンダも忘れずに行います。東日本大震災のときに台湾から日本に送られた200億円について、「台湾は中国の一部だから、中国は台湾もあわせると世界一、義援金を出した」と恥ずかしげもなく公言したほどでした。

中国人の風習としては、天災があってもほとんど一銭もカネを出さないのみならず、たとえ義援金が集まったとしても、役人が個人のポケットへ入れて着服してしまうことが多く、天災はむしろチャンスだと喜ぶことも多いのです。四川大地震のときには、義援金を不正に着服したとして、250人近い中国共産党幹部が処分されています。

一方で台湾人は昔からカネを出す性格であることは、東日本大震災のときに200億円以上の義援金を贈ったことを見れば一目瞭然ですが、私の知り合いも1,000万円を東京の銀行に義援金として寄付し、慈済会(台湾の仏教団体)は50億円を直接、仙台を中心とする被災地に送りました。私経由で数百万の現金やモノを現地に届けてもいました。ここからは、カネを出す台湾人とカネを着服する中国人という民族性の違いがはっきりとわかります。

今回の台湾南部の地震では、中国側も一応は「協力が必要なら救援を提供する」と意向を伝達、そして約3,500万円の緊急救済金を提供することを決めています。

中国即座に救援意向伝達も「必要なら」と消極的?

ところがその一方で、とんでもない印象操作も行っています。中国共産党の機関紙で人民日報系の環球時報は、先日、台湾総統選挙で勝利し、5月に総統への就任が決定している民進党党首の蔡英文と、同じく民進党で台南市の市長である頼清徳の対応が遅いということで、「不合格などという記事を掲載したのです(永山英樹氏のブログ「台湾は日本の生命線!」より)。

友邦台湾に対する中国の野心に反対しないのか

しかし実際には、蔡英文と頼清徳の対応は迅速であり、批判されるようなものではありませんでした。頼清徳などは、地震から41分後には対策センターを開設し、指揮にあたっていました。にもかかわらず、中国共産党の機関紙系列のメディアは、この震災を利用して民進党批判を展開したというわけです。

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