厚生労働省の調査によると「子どもの貧困率」は2012年の段階で16.3%と過去最悪の数字を記録。
昨今メディアでも報道されるように、日本における貧困層の広がりは、年々懸念されている状態だと言えるのではないでしょうか。
日本の、相対的貧困とは?
上記の厚生労働省の調査では、子どものほぼ6人に1人が「貧困」とされる状況におかれていることが指摘されていますが、
ここでいう貧困とは「相対的貧困」のことです。
一般に「貧困」といわれる状態には、下記の「絶対的貧困」と「相対的貧困」の2種類があります。
絶対的貧困
衣食住など生きるために必要な最低限の生活条件を満たすことができない状態
相対的貧困
その国や地域における平均的な生活レベル(および収入)よりも著しく低い水準で暮らすことを余儀なくされている状態。
経済協力開発機構(OECD)の基準を用い、収入から税金などを差し引いた全世帯の可処分所得を1人当たりに換算して低い順に並べ、中央の額の半分に満たない人の割合を「相対的貧困率」と定義しています。
2012年の場合は所得が122万円未満の人の割合を指しています。
「相対的貧困」という指標は、おもに先進国において、「絶対的貧困が存在しない」という前提のもとに使われており、日本で問題となっている「子どもの貧困」も、この「相対的貧困」にあたります。
子どもの貧困 「ひとり親家庭」における貧困の問題
また、厚生労働省が2012年におこなった調査によれば、「ひとり親家庭」における相対的貧困率の割合は50.8%と非常に高い数値となっています。
じつに「ひとり親家庭」の半数以上が貧困といわれる状態におかれていることになりますが、調査では「母子家庭」では80.6%、「父子家庭」では91.6%の親が就業していることも判明しています。
こうした調査の結果からは、日本における貧困の問題は「働いているのに生活が苦しい」という世帯が多い点にもあるということがわかります。
ちなみに、OECD(経済協力開発機構)が2008年におこなった調査によると、「親が働いていない」ひとり親世帯の貧困率ではアメリカがトップでしたが、「親が働いている」ひとり親世帯の貧困率では、日本がアメリカを抜いてOECD諸国のなかでワースト1位となっています。
経済だけの問題ではない
相対的貧困とは、お金のことだけではなく、雇用や福祉、教育などさまざまな要因によって「生きることが苦しくなっている」状態をいいます。
上記の「ひとり親家庭」のケースのように「働いているのに生活が苦しい」というのは相対的貧困のひとつのパターンですが、
その「苦しさ」にも「必要な物が買えない」「支払いができない」といった経済的な面から、「相談相手がいない」というような精神的な面まで、さまざまな要素があります。
「子どもの貧困」にもいろいろなケースがあり、はた目にはわからないのが今の状況です。
背景にあるさまざまな要因を考えると、子どもの家庭の状況や問題点を行政や学校側が把握しておくということも、今後の対策や支援を考えるうえで必要なことなのかもしれません。
執筆:井澤佑治(ライター)
<参考>
(ひとり親家庭の支援について 厚生労働省)
(母子家庭の貧困は自己責任? NHK Eテレ「ハートネットTV」)
<執筆者プロフィール>
井澤佑治(いざわ・ゆうじ)
ライター、舞踏家/ダンサー。通販メーカーのコピーライターとして、健康食品などの広告を数多く手がけたのちに、ダンサーとして独立。国内外で公演やワークショップ活動を展開しつつ、身体操作や食事療法などさまざまな心身の健康法を探究する。現在はダンスを切り口に、高齢者への体操指導、障がいや精神疾患を持つ人を対象としたセラピー、発達障害児の療育、LGBTの支援などにも携わっている。
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