挫折する中国の野望。いま日本に残された最善の道は「時間稼ぎ」

 

一時はアメリカを押しのけ覇権国家の座をうかがうほど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだった中国ですが、僅か1年余りで状況は一変。現在では人民元のシェアも低下し、中国経済は崩壊間近と囁かれています。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんは、今回の「南シナ海問題」にも中国の「焦り」が感じられるとし、「日本に必要なのは時間稼ぎ」だと述べています。

挫折する中国の野望~人民元のシェア低下

変化の激しい時代です。たとえば2015年3月に起こった「AIIB事件」。皆さんご存知のように、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、イスラエル、オーストラリア、韓国など親米国家群が、アメリカの制止を無視し、中国主導「AIIB」への参加を決めた。実に57か国がAIIBに入った。要するに世界の国々は、アメリカと中国を天秤にかけほとんどの国が中国についたのです。

反中の日本ではなかなか実感できませんが、2015年3月時点で世界の趨勢は、

「落ち目の覇権国家アメリカを捨てて、次の覇権国家中国についた方がいいぞ!」だった。

しかし、「AIIB事件でアメリカは目覚めました。ボンヤリ・オバマさんも、ようやく「アメリカ最大の敵は中国である」と気がついた。その後の彼の活躍は、すごかった。それまで、アメリカは、大きく三つの問題を抱えていました。

  • 欧州=ウクライナ、ロシア問題
  • 中東=シリア、IS問題
  • アジア=中国問題

オバマさんは、ロシアと和解し、ウクライナ問題を事実上解決。その後ロシアと共に、シリアのアサドと反アサドを停戦させた。そして、中国問題に力を集中させるようになった。するとどうでしょう?中国経済はボロボロになってしまったのです。

「AIIB事件」が起こった昨年3月、中国経済は、「世界の希望」だった。ところが1年5か月経った今、同じ中国経済は、「世界のお荷物」になっています。このあまりに急激な変化はなんでしょう?

私は、「経済情報戦」の影響も大きいと見ています。「経済情報戦」とは何でしょうか? 東芝や三菱自動車が不正をし、それをマスコミが報じ、株が下がった。これは、「事実」が「情報」として流れ、次の事実(株価下落)をつくったのです。これは普通。

しかし、あるマスコミが、あまり根拠がなくても、「〇社は問題が多い」と書けば、それで株価は下がります。これは、「情報事実つくった」のです。つまり、最初に「情報」があった。

中国についても同じことがされました。同国のGDP成長率は、2014年7.3%、2015年6.9%と発表された(もちろん、この数字をそのまま信じている人は、誰もいません)。他の国であれば、「うらやましい!」という数字。しかし、中国については、AIIB事件以降肯定的な記事はいっさい消え、代わって、「中国経済崩壊が近い!」という記事が毎日出てくるようになった。実際中国経済が減速しているのは事実。しかし、アメリカメディアがそのプロセスを加速させているように見えます。

いずれにしても、中国経済はボロボロになりました。

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