豊洲市場「空洞」問題を意図的に長引かせようとしている真犯人

 

そもそも、2011年当時、石原が検討せよと命じたコンクリ案を盛り込んだ設計図ができたというのに、担当者が石原にその図面について説明していないというのは、常識的には考えにくいのではないか。

石原が当初、取材陣にコンクリ案を「担当局長から聞いた」と言っていたのを「私が言った」と訂正するなど、かなりブレがひどいことを考え合わせると、地下空洞の存在を知らされていた可能性もある。ただし、空とぼけているのか、記憶力の問題なのかは、定かでない。

さて、このように原点に戻ってこの問題を考えることができるのは、小池知事が「立ち止まって」くれたからであり、そのこと自体はいいのだが、石原都政の杜撰な運営による大失策の尻拭いがはたして小池知事にうまくできるだろうか。

意図せずパンドラの箱を開けてしまい、次から次へと奇怪なものが飛び出してきて、どうにもならなくなりつつあるのではないだろうか。

メディアでは「豊洲移転白紙撤回の声が出始めた。それが小池知事にできるのなら、ぜひやってもらいたい。が、その場合、過去にさかのぼって石原元知事らの責任を追及してもらう必要がある。そうでなければ納税者の理解は得られまい。

小池知事は当初、「東京大改革」の仮面をかぶりながら、既得権勢力と手を握り、その支援のもとに築地市場移転や東京五輪をスムーズにやり遂げたいと考えていたはずだ。

しかし、地下空洞にたまった水からヒ素やシアン化合物が検出され、豊洲市場の安全性に世間の疑いが強まっている以上、それを無視して移転を強行することなどできない。

少なくとも、小池知事は来年春までという移転計画の腹づもりを変えざるを得なくなった。そうなると、いままでは事態を静観していた都議会の自民党も移転利権を死守するために動き始めるだろう。畢竟、小池知事はジレンマに陥ることになる。

巷間言われているような都議会との全面対決などできはしない。さりとて、都民の彼女に対する幻想を維持するには、ある程度の対決姿勢も必要だ。小池知事はいつまで涼しげに微笑んでいられるだろうか。

image by: MAHATHIR MOHD YASIN / Shutterstock.com

 

国家権力&メディア一刀両断』 より一部抜粋

著者/新 恭(あらた きょう)
記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。
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