元『旅行読売』編集長・飯塚玲児さんのメルマガ『『温泉失格』著者がホンネを明かす~飯塚玲児の“一湯”両断!』。今回は、旅館に泊まったときの部屋担当の仲居さんの「教育」について。仕事柄、多くの旅館に泊まり、数多くの仲居さんと接してきた飯塚さんは、「仲居さんの人柄ひとつで旅の楽しさが少なからず変わってくる」と、その重要性を語っています。
仲居さんの教育に付いてもの思う
今号では、宿の仲居さんのことを少し書いてみたい。
僕は仕事柄一人で旅館に泊まることが多いから、部屋担当の仲居さんの人柄によって、少なからず旅の楽しさが変わってくる。
僕は基本的には、割と放っておいて欲しいタイプの人間だが、夕食時などに、ちょっとした話をしたりできると、それはそれで楽しい。 若くて美人ならもう言うことはないが、ご年配の仲居さんでも、いわゆる「付かず離れず」の絶妙な距離感で接してくれることがあって、これは経験のなせる技だろう。
こちらも仕事で泊まっているので、何となく、宿の歴史のことなどを聞いてみることもあって、この種の質問にしっかり答えられる仲居さんというのは話していても楽しい。
ただ、問題なのは、経験豊富で宿の歴史知識などもかじっているのだけれど、その情報が微妙に間違っているということが少なくないことだ。
たとえば、老舗宿で創業が江戸時代後期なのか明治初期なのかは、数年違い何かもしれないけれど、記事にすると大きな違いになる。
歴史のある湯治宿で、宿泊棟がいつの建物なのか、昭和のころの建物です、と言われても、昭和ヒト桁なのか、昭和40年代くらいなのかでは全然違う。
大正時代というのはわずか15年しかないから、このあたりの時代のものは間違いが生じやすいということもあると思う。大正10年の建物を「大正初期の建物」と仲居さんが説明してくれたとして、それが「初期」という表現でいいものかは、なかなかに悩ましい。
こうした仲居さんの説明をそのまま記事にすると、間違いを書くことになることだってある。 記事が間違っている、と言ってくるのは、たいていはその宿の広報担当で、そういうことがないように「先方校正」で記事を見せろ、ということにもつながっていると思う。
だけど、やっぱり仲居さんの教育だって、広報担当者の大きな仕事だと思う。