【書評】なぜグリコはポッキーの売上を50億円も伸ばせたのか

 

難しいは、新しい。これは、私が口ぐせのように言っている言葉です。誰でもできることばかりやっていても、新しく魅力的な商品は絶対に生まれない。誰も実現したことのない困難に立ち向かわなければ、お客様にサプライズを与えることはできません

「若い世代の家飲みのスタイルに合うおしゃれなおつまみを提案できないか」という仮説でした。このような事実から生まれたのが、お酒のつまみとしてヒット商品となった「チーザ」

どんな仕事も同じでしょうが、うまくいかないこともありますし、楽しいことばかりではありません。課題に真剣に向き合い、深く考えれば考えるほど、眉間にしわが寄り、しかめ面になっていくこともあります。しかし、そういうときこそ、チームリーダーは「楽しむ」という商品開発の原点に立ち返る必要があります

あくまで大切なのは消費者目線。「いくらなら買ってもらえるか」

コンセプトは「根拠+顧客提供価値」でつくる

「Aなので、Bできるお菓子」

私は日頃から「できるものではなく、売れるものをつくる」というメッセージをメンバーに発信しています。自分たちが「できるもの」を優先し、お客様を置き去りにしていないか、あらためて考えてもらう

バレンタインデーは、チョコレート業界全体では盛り上がりますが、日常的に食べるスティック菓子というポッキーの立ち位置からいって有利な立場とはいえません。バレンタインデーの主役である板チョコではできないことを提案しなければいけないという条件の中で、私がチョコレートマーケティング部に異動してくる前から「デコポッキー」というキャンペーンをしかけてきました

お客様とのタッチポイントを無数につくる

「クラッツ」や「チーザ」では、テレビCMだけに頼らない施策も考えました。飛行機(ANA)のビジネスクラスの機内食やビアホールのおつまみとして提供してもらったり、ビール(アサヒビール)の6缶パックのおまけにしてもらったり、飲食店(プロント)のメニューとして販売してもらったりと、お客様がクラッツやチーザを知るきっかけをさまざまなシーンでつくっていきました

「自分が携わる商品を好きになる」のがマーケターの最低条件

読んでいて好感が持てたのは、著者があくまで自社商品を売る姿勢を崩していないこと。

バトンドールは、いわばポッキーの高級バージョンといえるお菓子で、バターをふんだんに練り込んだ生地をじっくりと焼き上げ、さらに「澄ましバター」という、バターを溶かしたのち水分と固形分を取り除いた濁りのない透き通った黄金色の液体をしみ込ませてつくりあげたリッチなプレッツェルと、数日間寝かすことによって独特の風味とコクを醸し出すチョコレートの組み合わせが特徴です。現在は、阪急うめだ本店、高島屋大阪店、高島屋京都店、阪急百貨店博多店で、1箱501円で販売し、おかげさまで行列ができるほどの人気を博しています

このように、同社が展開しているあらゆる商品を、読者が欲しくなるように丁寧に説明しており、「これぞサラリーマンの鏡!」と、思わず声を上げたくなりました。前半はやや冗長な部分がありますが、後半に入ると一気に面白くなります。ぜひ読んでみてください。

image by: Shutterstock

 

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著者はAmazon.co.jp立ち上げに参画した元バイヤー。現在でも、多数のメディアで連載を抱える土井英司が、旬のビジネス書の儲かる「読みどころ」をピンポイント紹介する無料メルマガ。毎日発行。
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