大人の「いい背中」を見て育った子供が、日本の未来を救う理由

 

「わが家の太陽」

同じく中学校3年の新井淳子さんも、母親の生きる姿勢に感動した一人だ。淳子さんは、お母さんが「わが家をいつも明るく照らしてきた太陽だ」と思ってきた。それがある時、お母さんの友達から送られてきた数年前の手紙を読んで、愕然とした。

なぜなら、その手紙には生活に苦しむ母を気遣う友人の言葉が次々に並べられていたからである。

 

手紙の送られてきた数年前というのは私たちが千葉に引っ越してきた頃のことだ。祖母の介護、慣れない土地柄、近所間での孤立感など、たくさんの悩みや不安にさいなまれ、疲れ切った母が私の脳裏をかけめぐった。そこには、強くてたくましい母はいなかった。私の知っている母ではなかった。

 

それから、私は何度もその当時の記憶を探ってみたが、いつも思い出すのは、学校に行きたくない、とぐずる私を明るい笑顔で見送ってくれた母の姿だけだった。手紙の母を探してみたけれど、見つけることは一度としてなかった。母の当時の気持ちを思うとかわいそうでならなかった。でも、それ以上に、全く、母の気持ちに気づけなかった自分がくやしかった。…

 

祖母は、また病気が出てきて介護が必要となり、母は大変な思いをしている。でも、今度は母が私にも悩みを話してくれるから、少しだけだが母を支えることができる。

 

母がしてくれたように、今度は私がわが家を明るく照らしていきたい。

淳子さんは家族のために悩みや苦しみを隠して明るく生きている母親の姿を発見し、今度は自分も家族のために尽くそうと志すのである。

みんながいるから

小学校2年生の高山なつ美ちゃんのお父さんはタクシーの運転手をしているが、どうやらお母さんがいないらしく、お父さんがなつ美ちゃんの世話をしてくれている。

わたしのお父さんは、タクシーの運転手をしています。朝早い時は、5時半ごろに家を出ます。よるは、12時ごろになることもあります。あまりねる時かんがなくって、たいへんなのに、きちんと朝ごはんを作ってくれます。作れないときは、ちかくにすんでいるおばあちゃんが、作ってもってきてくれます。いっぱいはたらいて、いっぱいつかれていてもお父さんといっしょにねる時が少ししかないのがかなしいです。…お父さんとはいっしょにあそびたいけど、いつもしごとでつかれているので、ゆっくりねてもらいたいです。

お父さんが自分のために一生懸命尽くしてくれるように、なつ美ちゃん自身も誰かのために役立ちたいと思う。

学校で、1年生から6年生までのおともだちがあつまってあそぶ「なかよしかつどう」がありました。かえりの会になって、おなじはんだったももこちゃんがはっぴょうしました。

 

「わたしは、みんなとなかよくできるかなって、心ぱいしていたけれど、なつみちゃんがいてくれたから、あん心しました。なつみちゃんが、そばにいてくれたから、じぶんのかんがえが言えました」

 

わたしは、うれしかったです。わたしがいるだけで、あん心してくれたなんて、ちっともしりませんでした。いるだけでいいなんて。

まだ小さくて人のためには何にもできなくと思っていたなつみちゃんだが、自分がいるだけで誰かの為に役立っていると分かった事がとても嬉しい。

お父さんは、わたしがいるだけで、あん心してくれるかな。おねえちゃんは、どうかな。おばあちゃんは、どうかな。…みんながいるから、わたしもがんばります。たくさんのおともだちもいるから、がんばれます。いつもわたしのそばにいてくれる家ぞくであってください。いつまでも、わたしのともだちでいてください。

おじいちゃんの特技

親が自分たちのために頑張ってくれる姿を見習って、子どもは自分も何か家族のためにしてあげようと思う。それができた時の喜びは大きい。小学校5年生の石橋いずみちゃんのお祖父さんはリュウマチで、一人では歩くこともできない。

でも、そんなおじいちゃんにも、特技があります。

 

それは、絵を描くことです。花の絵が、すごくうまくて、みんなに、うまいねぇー、とおじいちゃんはよくほめられます。こんなおじいちゃんは、わたしの自慢できる一人です。わたしは、おじいちゃんのすばらしい絵をもっと、たくさんの人に見て貰いたいと思います。そして、おじいちゃんのために、絵の小さなてんらん会を開きたいです。…

 

それと、十五夜のばん、月がとてもきれいなので、おじいちゃんに見せてあげようと思い、車いすで散歩に出かけました。田んぼのほうに行くと月がよく見えて、わたしたちが歩くと月がついてくるように思いました。おじいちゃんは、とてもうれしかったようみたいで、なみだをぽろぽろと流して、「ありがとう」と言っていました。みんなで、「きてよかったね。またこようね」と話ながら帰りました。

小学生の自分にもお祖父ちゃんの車椅子を押してやって涙を流すほど喜ばせてやることができる。いずみちゃんの夢は、車椅子の人が楽に行き来できるよう、段差のない道をつくることだ。それができるようになるまでおじいちゃんには長生きして欲しいと思う。

こうして子供たちは人間が生きる事の意味を体験の中から掴んでいくのだろう。その意味とは、家族やクラスという共同体の中で自分の努力を通じて他の人が喜ぶような事をしてあげる事である。

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