【書評】学校vsモンスター母。息子を殺したのはいじめだったのか

 

さおりについたのが高見澤昭治弁護士だ。高見澤はあらゆる手段を用いて学校側、県教委、バレー部を追及しているが、旧知の仲の鎌田にも大々的なキャンペーンの一翼を担わせた。鎌田は高見沢の資料提供と、さおりへの長時間インタビューをもとにこの記事を書いた。原告側のストーリーをそのままルポ風に焼き直した代物だ。鎌田にとっては、生徒や保護者は学校という抑圧組織の被害者なのだ。保護者にも問題がある可能性を頭から排除し、さおりを理解しない学校やマスコミにこそ問題がある、と主張した。彼にとっていじめ自殺は疑いようのない事実だ。彼は二度目のルポでも、いじめがあったと決めつけた。

この事件は「いじめ自殺」事件ではない。いじめはなかった。さおりというモンスターの暴走が悠太君を自殺に追い込んだのだ。さおり側は民事、刑事両方の裁判で全面敗訴した。崩壊寸前だった学校は立ち直った。さおりの毒で暴走した高見澤昭治は相応の罰を受けたが、ミスリードで盛んに煽り立てた人はどう責任をとったか。筆者は鎌田慧に二度手紙で取材を申し込んだがなんの返事もなかったという。

帯の「たった一人の母親が学校を崩壊させた」というのは言い過ぎ。崩壊をくい止めた教師たちの闘いを描いているのであって、崩壊はしてない。「教育現場の『恐るべき現実』に迫る」も微妙。教育現場の問題というより、野放しにされているモンスターのほうが大問題だ。読者はこの本でモンスターの吐き出す毒を体験せざるを得ない。かなりつらい。覚悟して読みましょう。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

 

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