男性版の更年期障害とも言うべき「LOH症候群」の症状は?

2017.03.23
by gyouza(まぐまぐ編集部)
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「加齢男性性腺機能低下症候群」が正式名称の「LOH症候群」。

男性更年期障害というとイメージしやすいかもしれません。

日本には600万人の潜在患者(成人男性の9人に1人)がいると推計され、とくに、中高年の働き盛りが要注意だそうです。

あなたや、あなたのパートナーは大丈夫でしょうか?

ご一緒に確認していきましょう。

LOH症候群とはどんな病気?

加齢によって男性ホルモン「テストステロン」の値が低下する症候を「LOH症候群:late onset hypogonadism 」と呼んでいます。

いわゆる「男性更年期症状(AMS)」として、次のような項目が挙げられています。

身体症状

骨・関節・筋肉の痛み、発汗、ほてり、睡眠障害、記憶・集中力の低下、肉体的消耗感、頭痛、めまい、耳鳴り、頻尿

精神症状

落胆、抑うつ、いらだち、不安、神経過敏、生気消失、倦怠感

性機能関連症状

性欲低下、勃起障害、射精感の減退

順天堂大学医学部付属順天堂病院泌尿器科によると、LOH症候群は、うつ、性機能低下、認知機能の低下、骨粗しょう症、心血管疾患、内臓脂肪の増加、インスリン抵抗性の悪化、HDL(善玉コレステロール)の低下、コレステロール値とLDL(悪玉コレストロール)の上昇にも影響があり、メタボリックシンドロームのリスクファクターとなっています。

また、心血管疾患、糖尿病、呼吸器疾患のリスクを高めるといわれています。

LOH症候群の原因:テストステロンの影響

男性ホルモン「テストステロン」がLOH症候群に影響を与えています。

男性の場合、精巣でテストステロンは作られて分泌されます。

性欲を高める、身体をたくましくする、ひげを生やす、決断力をつける、挑戦意欲を高めるなど、心身を活性化して「男らしさ」を発揮させるはたらきをするのがテストステロンです。

また、血管内皮を再生して動脈硬化を防いだり、脂質代謝を活発にして肥満防止に努める働きもあります。

そして、「社会的ホルモン」としてのテストステロンには、自分をハッキリと主張する時、必要なホルモンという役割もあって、声が大きくハッキリしている、主張をキチンとするなどのさいに、分泌量が増えるともいわれます。

さらに、脳の認知機能にも関与し、決断力や判断力を高めるといわれています。

ちなみに、「顔の長い人、薬指が人差指より長い人はテストステロンの分泌が豊富」とのこと。

ところで、テストステロンの分泌量は20代にピークを迎え、以降、加齢とともに徐々に減少します。また、1日のなかでも刻々と変化し(日内変動)、夜間、眠っている時に産生されるので、朝、血中濃度が高く、夕方には低くなります。

ただし、60歳代以上よりも40~50歳代の方が、分泌量が少ないという報告もあります(M.Yasuda,The Journal of Health&Gender,2007より)。

恐らくこれは、ストレスなどが影響しているものと思われます。

このように、LOH症候群が起こるのは、おもにテストステロンが減少するという生理的要因によりますが、ほかにも、ストレス、不規則な生活といった心理・社会要因もこれに少なからず関連しているということでしょう。

LOH症候群の診断と治療

日本泌尿器学会・日本Men’s Health 医学会が作成した「LOH 症候群診療の手引き」によると、日本では、血中遊離テストステロン値8.5pg(ピコグラム:1兆分の1グラム)/mlが正常下限値となっています。

これ以下になると、治療介入を行う基準値とされています。

欧米と違って日本人の場合、総テストステロン値は加齢によっても減少しにくいので、遊離テストステロン値で判断されるとのこと。

これに、さまざまな症状(AMS:aging male symptom )のセルフアセスメント型評価を合わせて、26点以下が正常、50点以上を重症としています。症状のセルフチェックは次のサイトでできます。
(「LOH症候群の問診票」)

LOH症候群の専門的治療として、「テストステロン補充療法(TRT)」と呼ばれるホルモン療法が行われています。

経口剤、注射剤、皮膚吸収剤がある中で、日本では、注射剤のエナント酸テストステロンだけが保険適応です。2週間おきに125~250㎎を筋肉注射するのが通常の方法だそうです。

LOH症候群の予防や改善:メンズヘルス

LOH症候群の症状は、テストステロンの減少のほかに、ストレスや生活の不規則によっても起こりますから、生活習慣の改善といった「ライフスタイル」の変化も、LOH症候群の改善や予防につながります。

食事、運動、禁煙、アルコールの適量摂取、生活での満足感(QOL)を高めることなどが奨励されています。

目下、国際的に男性の健康を考える「メンズヘルス」が進んでいるそうです。

テストステロンをバイオマーカーとしたアンチエイジング医学を中核にした「メンズヘルス外来」も、今後は増えてくるようです。
 
【参考】
日本泌尿器学会・日本Men’s Health 医学会、「LOH 症候群診療ガイドライン」検討ワーキング委員会『加齢男性性腺機能低下症候群(LOH 症候群)診療の手引き』(https://www.urol.or.jp/info/data/gl_LOH.pdf)

 

執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
 

<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお・かおるこ)
助産師・保健師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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記事提供:Mocosuku(もこすく)

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